2017 Fiscal Year Research-status Report
陽子線治療における部位別正常組織有害事象発生確率パラメータの決定
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17K15815
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
馬場 大海 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 医学物理士 (70763572)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生物線量計算システム構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では体内の位置によって変化する陽子線の生物学的効果を考慮した線量評価を行い、線量情報と臨床データから正常組織別の有害事象発生確率モデルのパラメータを決定する。平成29年度は、体内の位置によって変化する陽子線の生物学的効果を考慮した線量評価を行うための生物線量計算システムの構築を予定していた。そのため、食道癌細胞を用いた生物学的効果比(RBE)の解析と、モンテカルロアルゴリズムを搭載した線量計算システムの吸収線量計算精度検証を実施した。 RBE測定に関して、食道癌細胞株に対してX線、陽子線照射を行い、コロニー法を用いて細胞生存率曲線を作成し、RBEを求めた。400-3600個の細胞をフラスコに播種し、24時間培養後にX線(True-beam)及び陽子線(C-235)の照射を行った(N=3)。陽子線照射は挿入したポリエチレン製ファントム厚を変えることで細胞に照射される飛程の位置を調整する。線量結果からRBE=(基準となるX線である生物効果を得るために要する吸収線量)/(陽子線で同等の効果を得るために要する吸収線量)を求めた。次段階として解析したRBEと吸収線量計算アルゴリズムを組み合わせることで、RBEの変化を考慮した生物線量計算を行う予定だが、まずその前段階として今回使用するモンテカルロアルゴリズムを搭載した線量計算システムの吸収線量計算精度検証を行った。照射室ごとに水等価物質内、不均質物質内(水+空気+骨)における単純条件(矩形、非矩形照射野)擬似患者条件(前立腺、鼻腔、肺照射野)で照射を行い、検出器を用いた測定値と計算システムの計算値を比較した。測定深を変えて比較した結果、一致度を示す指標であるγインデックス評価(3mm/3%)にて90%以上と、臨床で用いている施設許容値を満たす結果であり十分な計算精度で吸収線量が計算可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、体内の位置によって変化する陽子線の生物学的効果を考慮した線量評価を行うための生物線量計算システムの構築を予定していた。現在、食道癌細胞を用いた生物学的効果比(RBE)の解析と、モンテカルロアルゴリズムを搭載した線量計算システムの吸収線量計算精度検証の実施は完了しており、次段階として解析したRBEと精度検証した吸収線量計算システムを組み合わせた生物線量計算システムを構築するが、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方針としては、解析したRBEと精度検証した吸収線量計算システムを組み合わせた生物線量計算システムを構築し、細胞を用いた生物線量検証の実施を目指している。また、検証後のレトロスペクティブ解析に向け陽子線治療を施行した患者の線量分布及び有害事象発生情報の収集を行う予定である。
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Causes of Carryover |
生物線量計算システム構築にあたり、RBE測定のための細胞実験、吸収線量アルゴリズムの線量検証、国際学会での情報収集を実施した。今後、線量計算の高速処理のためGP-GPUボードを搭載したコンピュータを用いて、RBEモデルを組み込んだ生物線量計算システムを構築し、生物線量計算精度検証として細胞実験を予定している。また、得られた研究成果等は国内学会(日本放射線腫瘍学会、医学物理学会等)、国際学会(米国放射線腫瘍学会、米国医学物理学会等)で随時発表し、学会誌等に発表する予定である。
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