2017 Fiscal Year Research-status Report
個別化高精度放射線治療におけるDual-energy CTの基礎検討と臨床応用
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17K15816
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Research Institution | Osaka International Cancer Institute |
Principal Investigator |
大平 新吾 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 放射線治療科技師 (50792694)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 医学物理 / dual energy CT / 放射線治療 / 高精度 / 個別化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではDual-energy computed tomography (DECT) によって測定した患者個々の臓器機能情報に基づいた個別化高精度放射線治療への導入を目指している。個別化高精度放射線治療の実現はDECT装置の物理工学的精度確保が大前提となる。我々の検討において、DECT ではCT 値と電子密度の関係は理想的なlinear な関係(R2=0.9998)であるのに対し、一般的に使用される管電圧120 kVp では電子密度が1を境に、bilinearになることが明らかとなった。臨床の放射線治療用CT 撮影で使用すると考えられる様々な撮影条件下で、DECTの電子密度の算出精度をさらに詳細に検証し、最適な撮影条件を検討した。 日本初導入である現有のDECT 専用ファントムを使用し、人体内で存在しうる様々なヨード、カルシウム密度の算出精度を検証する。造影剤は主として血管内に存在するため、ヨード密度ファントムは血管を模擬した微細構造のものを使用した。血管径が小さくなるほどDECTのヨード密度算出精度が低下することが明らかとなった。 逐次近似画像再構成法を応用することで、被ばく線量低減が可能であるが、画質の劣化を伴う。我々は、空間・コントラスト分解能を損なうことのない至適な逐次近似再構成レベルを決定し、DECTの臨床運用を開始した。 DECTの物理工学的精度は未だ明らかにされておらず、精度の許容誤差が設定されていない。我々は様々な測定条件下での精度検証、短期・長期期間におけるDECT測定の再現性を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではファントムを用いた実験により、DECTの電子密度算出精度、ヨード・カルシウム密度算出精度、被ばく線量低減などの放射線治療に応用するための物理工学的精度を定量化した。これらの基礎検討は平成29年度中に英語論文として2編Publishされた。この基礎検討はこれまでになかった、DECTの品質管理プログラムを確立するために非常に有用なデータとなり得る。当初の平成29年度研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究ではDECTの個別化高精度放射線治療への臨床応用を目指す。食道癌20 症例に対する初期検討において、致死的な放射線肺炎誘発と関連のある、肺への5、10Gy 照射される割合はVMAT 単独ではそれぞれ65±20、29±12% であったのに対して、我々が開発した、通常照射と回転型強度変調放射線治療(VMAT)を組み合わせたHybrid-VMATでは57±15、24±10%に低減できることを明らかにした。今後は、食道・進行期肺癌患者(年間30 症例)のヨード取り込みを定量化することで、肺機能評価を行う。得られた生理学的画像に基づき、Hybrid-VMAT によって、高機能領域に対しては極限までの厳しい物理的線量制約を設定する。 また、術前放射線治療患者(年間50 症例)の造影DECT 画像上の膵腫瘍に取り込まれたヨード量をデータベースに登録する。第一から五の各腰椎のカルシウム密度も同様に登録を行う。本研究では、ヨード取り込み量と組織学的効果、腰椎カルシウム密度と治療後骨折の関連を明らかにし、治療効果・有害事象予測モデルを作成する。効果不良・高リスク群に対しては、Hybrid-VMAT を膵臓癌治療に応用し、腫瘍への線量増加、腰椎への線量低減を可能にする治療法の開発を試みる。 本研究で得られた研究成果は国内外の学会で発表する。また、医学雑誌に投稿を行う。報道関係にも情報提供して、社会・国民に貢献するよう発信する。
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Causes of Carryover |
H29年度は予定より旅費が少なかったため、H30年度に学会における研究発表のための旅費に使用する予定である。
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