2018 Fiscal Year Research-status Report
ポピュレーション戦略による認知症予防対策のためのソーシャル・キャピタル研究
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17K15822
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
宮國 康弘 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 老年学・社会科学研究センター, 研究員 (90734195)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 認知症 / ポピュレーションアプローチ / マルチレベル分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
要介護にならないための介護予防の重要性が増すと共に、ソーシャル・キャピタル(人々の繋がり)の認知症予防における研究が重要になっている。個人レベルの認知症リスク要因の研究の蓄積はある一方で、地域レベルの要因と認知症発症の関連を検証した報告はほとんどない。 そこで、本研究では、地域レベルのソーシャル・キャピタルと認知症発症の関連を縦断データを用いて検証し、ポピュレーション戦略における認知症予防対策へ寄与することを目的とした。 2017年度は、データ収集・クリーニング期間であり、既に実施済みのベースライン調査2010年データに、2016年の要介護認定データ(要介護度・認知症自立度、認定申請日)・介護保険料賦課情報データ(資格喪失日、資格喪失事由、保険料段階)を結合しデータセット構築を進めた。また、2010年から2016年までの6年追跡データでは、追跡期間が短い可能性もあるため、地域は限定されているが、2003年ベースライン調査から追跡して2013年の要介護認定データ・介護保険料賦課情報データを結合した10年追跡データにて分析も進めた。 6年追跡データでは、調査回答者のうち、追跡可能だったのは97.5%、11保険者(13市町村)55,243名が追跡できた。また、10年追跡データ分析の結果、地域レベルの社会的サポート割合(情緒的サポート受領割合)が高い地域ほど、個人レベルの認知症発症が低かった。情緒的サポート受領が豊かな地域は、認知症発症を抑制する可能性が示唆された。 2018年度は、論文化を進めたがアクセプトには至らず、2019年現在も論文化に向けて投稿準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、3年目に投稿・論文化の予定で進めていた。現在投稿準備中であるため、おおむね順調に進展している。引き続き論文化に向けて進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
分析の結果、地域レベルの情緒的サポート受領割合が1%上がると、認知症発症リスクが3%低くなることがわかった。課題として、回収率、認知症種類の情報がないこと、A県のみのデータであることなど限界はあるが、地域レベルの社会的サポートと認知症発症の関連が結果として得られた。地域レベルの情緒的サポート受領割合を増やしていくことが、個人レベルの認知症発症を抑制する可能性があることが示唆され、この結果を論文として引き続きまとめていく。また、今年度追加調査を実施しその結果をまとめる。
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Causes of Carryover |
解析結果のまとめを進めることができ、2年目の計画であったデータクリーニング等は支出が少なかった。2019年度については、追加調査費用、論文執筆の助言を受けるための専門的知識の供与のための謝金・交通費等に使用していく。
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