2017 Fiscal Year Research-status Report
リスクスコアに基づく経済的エンリッチメントデザインの構築
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17K15836
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
室谷 健太 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (10626443)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エンリッチメントデザイン / 症例数設計 / バイオマーカー / 臨床試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの臨床試験は,選択基準・除外基準を満たした患者全員に一律,割り付けられた治療をして治療効果を評価してきたが,昨今のリスクスコア開発によって,イベントを起こしやすい症例は比較的高い感度・特異度で同定することが出来るようになってきた.患者をリスクスコアを用いて予め高リスク集団に絞る(エンリッチメントする)ことが出来れば,臨床試験の効率化,低コスト化が実現する.本研究では,従来(一律,全員治療)の方法で評価された試験結果から想定される群間差と,リスクスコアの感度・特異度の情報からエンリッチメントデザインを構築するシステムを開発することを目的とする. 初年度は想定されるエンドポイントの中で比較的扱いやすい割合をエンドポイントとしたときの症例数設計方法の開発を行った。Treatment群とControl群の並行群間ランダム化比較試験を考え、エンドポイントは有効割合とし、治療効果を予測することが既知の感度・特異度で可能となるマーカーがある状況を想定し、さらにマーカーを考慮しない場合(all comer)でのTreatment群とControl群の治療効果がパイロット研究で分かっているとする。この設定のもとで、想定されるエンリッチメント後の予測治療効果の導出式を求め、その予想治療効果差を有意水準α、検出力1-βで検出するための症例数設計式を導出した。 この成果は国内の2つのシンポジウムおよびフォーラムにて発表し、生物統計学および機械学習の研究者からの示唆を受けることが出来た。 割合に関する方法論開発は完了したものの、実際の臨床試験の場では生存時間に基づく議論も重要である。現在、ハザードに関する方法論開発が進展中であり、多少の進展はみられるものの、成果としての報告には至っていない。次年度は生存時間に関する方法を開発し、アプリケーションの開発へ進む計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はリスクスコアの感度・特異度の情報,全患者に対して適用して得られた群間差の情報から,エンリッチメントデザイン実施に必要な症例数設計方法を開発することが目的である。研究の第1段階として、本研究に至るきっかけとなった問題と、エンドポイントを割合に設定したときの開発手法について、国内シンポジウム(室谷健太.基礎研究で発見された複数の予後予測マーカーのintegrated panel開発-臨床医との共同研究から― 統計学・機械学習若手シンポジウム「大規模複雑データに対する統計・機械学習のアプローチ」2017/9/15-17 名古屋工業大学)および国内フォーラム(室谷健太.割合をエンドポイントとしたときのエンリッチメントデザインのための症例数設計 第16回久留米大学バイオ統計学フォーラム 2017/9/29 アクロス福岡)にて発表し、国内研究者との意見交換を行った。研究の進展に関する重要な示唆を受けることが出来た。 当初の計画では初年度に方法論開発を進めることになっており、割合に関しては完了し、現在その次の方法について研究を進めているため、概ね計画通り進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、はじめに生存時間に関する方法論をまとめ、国内外の学会発表と論文発表を中心に行う。その過程で複数のシチュエーションにおける数値シミュレーションを実施し、本開発手法が有効な場面とあまり効果を示さない状況を明らかにし、実臨床ですぐに役立つ情報を探索する。 方法論開発と並行して計算プログラムを誰もが使いやすい形でオープンにするための方法についても考える。具体的には、実際にアカデミアで臨床研究を計画・実施している臨床医とのディスカッションを通じて現場が求める情報が網羅されるよう努める。ただし、方法論開発を第1に進めることとし、おおよその目途がついたタイミングで臨床医の施設訪問を行い、具体的なアウトプットイメージ共有を進めていくこととする。 仮に、方法論開発における数理的な側面で困難が生じた場合は、数理の専門家との意見交流のために施設訪問を行い、具体的な問題点の共有をし、ディスカッションを行い問題解決に努める。
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Causes of Carryover |
初年度に支出がなかった理由について説明する。まず、初年度に行った方法論開発において、方法論開発のために必要な新たな書籍が不要であったため書籍費がかからなかった。また、方法論開発が初年度の主眼であったため、数値解析のための電子機器購入の予定を次年度に繰り越した。学会旅費については、初年度に発表した2件のうち、1つは開催地が最寄りあったこと、もう1つは招待講演であったため旅費の支出がなかったためである。次年度はシミュレーション実施のためにデスクトップコンピュータを購入する予定である。施設訪問先での検討にも必要のためノートパソコンの購入も予定している。また、次年度で開発する方法論で新たな知識が必要になるため、書籍購入も検討している。旅費についても次年度は施設訪問に伴い、発生することが想定される。
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