2017 Fiscal Year Research-status Report
海産物中有機ヒ素化合物の毒性に対する調理形態や代謝の影響および毒性軽減の探索
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17K15859
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
曹 洋 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (70793751)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヒ素 / 食の安全 / 毒性 / 和食 / 海産物 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒ素化合物の化学形態別測定、海産物中有機ヒ素化合物の抽出及び研究試料の作製が、研究の遂行において重要な条件である。さらに、海藻類や魚介類中の有機ヒ素化合物の毒性指標として有効な試験方法の確立が重要であることから、本研究に向けて包括的な予備実験を実施した。 arsenosugar類は海苔(国内3地域)や昆布(北海道3地域)から水抽出にて溶出させることが可能であり、arsenosugar-Glyの化学形態が主体になる傾向を確認した。次に、脂質性ヒ素化合物はマグロの脂質部分より、有機溶剤抽出できることを確認した。これらの手法を用いることにより、arsenosugar類や脂質性ヒ素化合物の研究試料を作製できることが確認できた。 有機ヒ素及び無機ヒ素化合物に関する毒性評価においては、対象となる有機ヒ素化合物の特性から、最初は細胞毒性試験が定石と考えた。ヒト子宮頸がん細胞株(HeLa細胞)やヒト膀胱癌細胞株(T24細胞)を用い、無機ヒ素及びメチルヒ素化合物を対象として、アポトーシス試験やウエスタンブロット法でのCleaved Caspase-3などの評価を検討した結果、それぞれ有効である可能性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
市販乾燥の海苔や昆布、さらに、魚介類から有機ヒ素化合物の抽出方法を検討し、予備実験において相応の成果が得られたことから、研究計画の達成に向けて順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
近年の海洋生物を研究対象にした有機ヒ素化合物の探索から、人が食事から摂取する可能性のある有機ヒ素化合物は、水溶性のメチルヒ素化合物(主にアルセノベタイン)とarsenosugar類、そして、脂質性ヒ素化合物である。アルセノベタインや脂質性ヒ素化合物は魚介類、そして、arsenosugar類は海藻類に豊富に含有されていることが解明された。アルセノベタインは人と動物実験から無毒のヒ素と確認されているが、これに対して、arsenosugar類や脂質性ヒ素化合物の生体影響は未解明であり、国際的に当該分野の研究の必要性が論じられている。 本研究では、HeLa細胞、T24細胞、そして、新たにヒト由来iPS細胞などを用いて、有機ヒ素化合物及びその代謝物を含めた細胞毒性試験を実施する。さらに、食材中の有機ヒ素化合物について、調理過程及び胃腸での消化における化学的変化や毒性に関する情報は国際的に少ないため、当該分野の問題解明に先駆け的な研究を実施する。
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Causes of Carryover |
研究には、ヒ素の化学形態別測定に必要なHPLC-ICP-MS装置、海産物からの有機ヒ素化合物の抽出による研究試料作製、そして、毒性評価システムの構築などが必要である。 平成29年度から、研究室内へのHPLC-ICP-MS装置の設置に関連して、研究予算に計上していたロータリーエバポレーターの導入については、研究設備の高度化の必要性から一時延期したため、設備備品費の使用が次年度に繰り越しとなった。 平成30年度からは、これまでの予備実験の成果をもとに、本研究の遂行は可能と判断している。
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