2019 Fiscal Year Annual Research Report
Evaluation of effects of cooking form and metabolism on toxicity of organic arsenic compounds in marine products and toxicity reduction
Project/Area Number |
17K15859
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
曹 洋 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (70793751)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヒ素 / 有機ヒ素化合物 / 生活習慣病 / 食の安全 / 脳中枢神経障害 / 和食 / 海藻 / 昆布 |
Outline of Annual Research Achievements |
職業性、環境汚染、食品汚染などによるヒ素暴露からの健康障害(急性・慢性ヒ素中毒、発がん性)は無機ヒ素が原因であった。一方、海藻類や魚介類にはアルセノリピッドやアルセノシュガーなど有機ヒ素化合物の存在が明らかになった。最近、ドイツ、オーストリーなどの研究チームは、有機ヒ素化合物は血液脳関門の構造や機能、そして脳中枢神経に影響する可能性を指摘した。和食の国際的な普及や、栄養学的な視点から魚や海藻類の摂取が推奨されているが、海産物中のヒ素の毒性リスクを理解する必要がある。 本研究では、食材用乾燥海藻類(昆布、海苔)を対象として、水抽出によるアルセノシュガーを作製し、ヒト子宮頸がん細胞株(HeLa細胞)とヒト膀胱癌細胞株(T24細胞)にてヒ素化合物の細胞毒性試験を実施した。ウエスタンブロット法によるCleaved Caspase-3の結果から、アルセノシュガーは対照群の無機ヒ素(III)に比べ明確に毒性が低く、無機ヒ素の最終代謝物であるジメチルアルシン酸の毒作用に類似する結果を得た。また、調理過程と消化分解による変化を検討した結果、様々な条件においてアルセノシュガーは無機ヒ素やメチル化ヒ素化合物への分解がなく、調理や胃内での物理的や化学的処理からの毒性の発生がないことが確認された。 次に、ラット初代培養細胞を用いたin vitro試験法での血液脳関門モデルを構築し、無機ヒ素やその代謝物による脳機能障害の検討を試みた。無機ヒ素とその代謝産物のモノメチルアルソン酸はそれぞれ酸化ストレス応答タンパクの発現を誘導したことから、血液脳関門構造への障害が示唆された。これまでの研究成果から、妊婦(胎児)や乳幼児が食事から無機ヒ素や有機ヒ素化合物を大量もしくは連続的に摂取した場合、脳機能に対する影響の発生が示唆されることから、当該領域の研究の必要性や社会への啓蒙活動の重要性を確認した。
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