2020 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of Toxicity Assessment System for Industrial Chemicals by Drug Metabolizing Enzyme CYP2E1
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17K15862
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Research Institution | National Institute of Occupational Safety and Health,Japan |
Principal Investigator |
柳場 由絵 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所, 化学物質情報管理研究センター有害性評価研究部, 上席研究員 (90467283)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 薬物代謝酵素 / CYP2E1 / 胆管がん / 膀胱がん |
Outline of Annual Research Achievements |
胆管がん発生の原因物質として注目されたDCP はこれまでの研究において、高濃度曝露によるCYP 経路の飽和から、GST 経路が活性化することで産生されるグルタチオン抱合体の一部がDNA に結合する付加体損傷を引き起こすのではないかと推測されているが、それを明確に示す報告は無い。我々は、野生型、CYP2E1 ノックアウトマウスを用いた実験から、DCP の曝露による急性肝障害の発生にはCYP2E1 を介した代謝物が関与することを明らかにした。また、野生型およびCYP2E1 ノックアウトマウスを用いたDCP 吸入曝露実験から、DCP の代謝産物として1-クロロ-2-プロパノールとメチルグリオキサール(MG)を同定した。MG を曝露すると遺伝毒性作用のマーカーであるγH2AXを発現することを明らかにした。これらの結果から、DCP 曝露による発がんとCYP2E1 による代謝過程で産生されたMG が発がんの一因となりうることを示唆した。 最近、芳香族アミン類による経皮曝露による膀胱がんの発生が問題となった。OTの代謝にCYP2E1が関連するかどうか、OTおよびその代謝物による遺伝子損傷性の有無について検討した。我々は、ヒトCYP1A1、CYP1A2、CYP2E1を使用し、OTの濃度変化と代謝物の同定を行った。ヒトCYP2E1の場合でのみOT濃度の減少が観察された。また、ヒトCYP2E1の働きにより代謝物として2-amino-m-cresolが検出され、OTから2-amino-m-cresolへの代謝にCYP2E1が関与している可能性が示唆された。さらに、ヒト肝細胞およびヒト膀胱上皮細胞を用い、今回同定した代謝物である2-amino-m-cresolは遺伝毒性作用のマーカーであるγH2AXの発現が観察され、発がんにつながる代謝物の一つとなる可能性が推測された。
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