2018 Fiscal Year Annual Research Report
The development of hydrogen sulfide poisoning diagnosis method by measuring thiosulfate concentration with LC-MS/MS
Project/Area Number |
17K15874
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
的場 光太郎 北海道大学, 医学研究院, 講師 (00466450)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | チオ硫酸塩 / 硫化水素中毒 / 死後変化 / 法医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の計画では本年度は前年度までに確立した分析法を用いてチオ硫酸塩濃度の死後変化や硫化水素中毒診断に用いる際の注意点を調査することであった。また、検体の採取部位による違いについても同時に検討した。実際に採取部位の異なる検体3種(心臓から採取した血液、尿、心嚢液)について、硫化水素中毒ではない腐敗した死体(腐敗群)と腐敗していない死体(非腐敗群)から検体を採取してチオ硫酸塩濃度を測定し検討を行った。結果として、いずれの採取部位の検体においても非腐敗群に対して腐敗群で明らかな高濃度のチオ硫酸塩が検出され、心臓内血液で平均約160倍、尿で約18倍、心嚢液では約28倍であった。採取部位間では突出して高濃度に検出されることは無く、腐敗群において心嚢液の平均51.5(0.5~277.1)μmol/Lを最小として、心臓内血液は平均81.6 (15.1~358.0)μmol/L、尿では平均 93.2 (10.6~465.3)μmol/Lであった。腐敗群において心臓血では全例で硫化水素中毒診断の基準値を越えており、心嚢液では約6割の事例で硫化水素中毒の診断基準値を超えていた。また、尿では約5割の事例で硫化水素中毒の診断基準値を超えていた。以上から導き出される結論として、硫化水素中毒ではない場合でも死後変化により各体液中のチオ硫酸塩が産生・増加していることが示されており、その変化は心臓内の血液において特に著しいことが判明した。したがって,腐敗が進んだ事例ではチオ硫酸塩濃度を根拠として硫化水素中毒を診断するのは困難であることが多いと考えられる。また、心臓から採取した血液は死後変化の影響を受けやすいため、心嚢液や尿などの検体を使用して検査を実施することが重要である。
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