2017 Fiscal Year Research-status Report
ホスホホリンおよび遊離アミノ酸に着目したラセミ化反応による年齢推定法の改良
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17K15878
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
石井 名実子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特任助教 (10782386)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 年齢推定 / 歯 / ラセミ化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は歯牙象牙質内のアスパラギン酸(Asp)を用いたラセミ化反応による年齢推定法の改良について、Aspの抽出法に焦点をあて、従来の陽イオン交換樹脂カラムを使用する手技に対し、固相抽出カートリッジ2種類、それぞれStrata-X-C(島津)とBond Elut Plexa PCX(Agilent)を使用した抽出法の有用性について検討した。 検討に先立ち、Aspの光学異性体であるD体とL体の標準試料を使用し、光学異性体分析用カラムを用いたGC/MS分析において、D体・L体Aspの測定に最適なGC/MSの分析条件を設定した。さらに提供された下顎第二小臼歯から象牙質のみを採取・粉末化した後に加水分解を実施し、従来使用されてきた陽イオン交換樹脂カラム(DowexTM50W×8,Wako)に対しカートリッジ2種を用いてAsp酸を抽出し、D体・L体の分離・測定について比較した。 この結果、いずれのカートリッジを使用した手技であっても象牙質よりAspを抽出することが可能であり、そのD体・L体の分離測定ができることがわかった。さらに従来の手技と比較しても、カートリッジ使用法のAspの光学異性体分離能は良好であった。 従来の手技では樹脂カラムの作成からAspの抽出まで工程が多く煩雑であったが、カートリッジは樹脂カラムと比較すると使用法は簡略化されている上、コンパクトで使い捨てのため使用後の器具の洗浄も必要ない。また従来より短い時間で抽出後のAspを乾固することが可能であった。以上よりカートリッジは操作性が良好であり、時間の削減・作業の効率化を見込むことができ、従来の手技よりD体・L体Asp測定を適正化することが可能であるとわかった。 これらの研究成果は日本法歯科医学会第11回学術大会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
途中以下のトラブルが発生したが、概ね順調に進展している。 1.歯牙象牙質内のタンパク質を濃塩酸にて加水分解後、乾固させるのに必要であるエバポレーターが2度にわたって故障し、修理に出さなければならないタイムロスが発生した。 2.東京医科歯科大学法歯学分野において使用していたGC/MS(HEWLETT PACKARD, HP6890 GC System/ 5973 Mass Selective Detector)に接続していたパソコンが故障し、システムがダウンしたため、買い換えざるを得なくなり、アスパラギン酸の光学異性体分離測定のためのGC/MS分析条件を再検討しなければならず、時間がかかってしまった。 現在、これらの問題はすべて解決しており、今後の進捗については問題ない。
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Strategy for Future Research Activity |
固相抽出カートリッジを用いた歯牙象牙質内のアスパラギン酸(Asp)の抽出法については、分析データ数を増やし、再現性を検討した上で6月に開催される第9回国際法医学シンポジウムにて発表予定である。またこれらの内容を論文として国際雑誌に投稿する予定である。 従来の方法では各年代(10代後半~70代)の実際の歯牙を用いてAspの光学異性体比(D/L比)を求め、年齢推定を実施していた。今後、新たに内標準物質を用いた絶対検量線の作成を検討し、象牙質ホスホホリン内のAspおよび遊離Aspの光学異性体比から年齢推定を実施できるかについて検討していく。
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Causes of Carryover |
本年度は東京医科歯科大学法歯学分野に既存する試薬や光学異性体分析用カラムを使用したため、実支出額が予定より少なくなった。しかし今後、国際学会参加費用や、カートリッジ・試薬等の追加購入、新たな標準アスパラギン酸試料や内標準物質の購入、論文校正費の他、統計ソフト等の購入の為、本年度より多くの資金が必要となる。
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