2017 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌叢の機能と呼応する上皮のシングルセル解析による肥満関連大腸発癌機序の解明
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17K15920
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
佐々木 悠 山形大学, 医学部, 助教 (60466620)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | インクレチン / GLP-1 / 大腸腺腫 / 大腸癌 / 肥満 / メタボリックシンドローム / インスリン抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満、メタボリックシンドロームの増加を背景に、大腸がんは増加の一途をたどっており、社会的な問題となっている。肥満やメタボリックシンドロームに関連した大腸発がん機序を解明することは、本病態の征圧のための重要な課題と考えられる。我々は、インスリン抵抗性、高インスリン血症、アディポサイトカイン分泌異常、慢性の穏やかな炎症状態がこの肥満関連大腸がんおよび前がん病変である大腸腺腫の発生と深く関連していることを報告してきた。しかしながら、どのようにして肥満が大腸発がんに関わるのか、その機序の詳細は未だ不明である。そこで本研究では、生活習慣の縮図ともいえる腸内細菌叢の機能解析、代謝変化、それに呼応する腸管上皮の遺伝子発現変化を包括的に解析することで、肥満関連大腸発がんの発生機序を解き明かし、本病態の征圧に向けた新しい標的を探索する。 本年度は、インスリン分泌を制御する消化管ホルモンであるインクレチンの一つであるGLP-1の分泌異常が大腸腺腫患者でみられ、糖負荷後のGLP-1の分泌低下と大腸腺腫の数と大きさに相関することを見出し、学会および論文にまとめ発表した。この分泌異常が起こる機序およびそれが肥満関連大腸がん発生に関与する機序を解明するため、症例を蓄積ししつつ、順次、腸内細菌叢を解析し、大腸腺腫、癌に特異的に関与する菌種が同定されつつある。これらは肥満関連大腸がんの病態に関わる新しい因子であり、治療標的になる可能性があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の予定どおり、糞便サンプルの収集およびそれらのシークエンス解析を行うことができた。またインクレチンの分泌動態にいて論文発表もすることができ、本研究は順調に進行しているものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
健常者および大腸腺腫、癌患者の糞便中のDNAのシークエンス解析を進め、肥満関連大腸腫瘍に強く関与する菌種と機能を同定する。また大腸腫瘍のパラフィン包埋サンプルを用いて、腫瘍部および腫瘍近傍の正常上皮をレーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)にて区別して切り出し、RNAを抽出し、腸管上皮のトランスクリプトーム解析を行う。さらに腸管上皮のGLP-1分泌細胞であるL細胞、腸管上皮の幹細胞であるLgr5陽性細胞を免疫染色にて同定し、LCMにて特異的に切り出し、核酸を抽出し、遺伝子発現プロファイルを解析する。腸内細菌叢の機能解析、代謝変化、上皮の遺伝子発現変化を包括的に分析することで、肥満関連大腸発がんの発生機序を解き明かし、本病態の征圧に向けた新しい標的を探索する。
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Causes of Carryover |
糞便採取キットに手持ちがある状態で本研究を開始したため、残ったキットを使用後に新たなキットを購入した。そのため、本年度の採取キット数が予定より少なく済み、少額の次年度使用額が生じた。次年度は症例数を増やし糞便採取を続ける予定であり、助成金は有効に使用できると思われます。
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Research Products
(4 results)