2017 Fiscal Year Research-status Report
網羅的な遺伝子発現解析に基づく十二指腸上皮性腫瘍の発症機構の解明
Project/Area Number |
17K15925
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂口 賀基 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20791445)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 十二指腸上皮性腫瘍 / Wnt/βcatenin pathway / 大腸腺腫 / APC mutation |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、十二指腸腫瘍に対する網羅的遺伝子発現を行い、十二指腸腫瘍特異的マーカー遺伝子の同定ならびに十二指腸腫瘍の発生機序を解明することを第一の目標としている。 現時点までに、十二指腸上皮性腫瘍に対する網羅的遺伝子発現解析を通じて、十二指腸癌・腺腫で有意な発現変化を示す遺伝子群(mRNA)の特定に成功しており、GEO databaseへ投稿(GSE102208)している。さらにこれらmRNAに対するゲノムインフォマティックス解析を通じて十二指腸上皮性腫瘍が大腸腺腫に極めて類似した遺伝子発現プロファイルを呈することを示し、Wnt/βcatenin pathwayが十二指腸上皮の腫瘍化メカニズムと強く相関していることを示した。これらの結果をリアルタイムRT-PCRで再現性を確認し、さらに当施設で切除された十二指腸腫瘍に対する免疫組織学的検討でも検証しており、国内・国際学会において発表し現在投稿準備中である。 また現在ではさらに症例集積を継続するとともに、次の研究計画として十二指腸上皮性腫瘍とWnt/βcatenin pathwayの相関の機序について検討を続けている。十二指腸上皮性腫瘍に対する免疫組織学的検討の結果、十二指腸上皮性腫瘍においては大腸腺腫と同様のβcateninの発現上昇を認める反面、APCの発現低下は認めず、発癌メカニズムで根本的な差異があると考えられる。現在十二指腸上皮性腫瘍においてWnt/βcatenin pathwayが過剰発現する機序を特定すべく、APC mutationの有無を評価する目的でDNA sequencingを行っている。さらにmiRNAとmRNAの相関についても検討し、miRNAと発癌の関係につき解明を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在症例集積は予定より少し遅れており、まだ目標症例数に達していない。全ての症例データを同じ条件下で解析するため、遺伝子発現解析の段階にはまだ進んでいない状況である。H30年度中には目標症例数に達成する見込みであり、その段階で全ての遺伝子発現解析をほぼ同時に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度は引き続き症例集積を行い、preliminary結果を検証すべく多数の十二指腸上皮性腫瘍に対する遺伝子発現解析を行う予定である。 また、現段階までのpreliminary結果から十二指腸上皮性腫瘍においてWnt/βcatenin pathwayが過剰発現していることが判明している。この機序を特定すべく、現在APC mutationの有無を評価する目的でDNA sequencingを行っている。APC mutationが認められる場合には大腸癌とほぼ同等のadenoma carcinoma sequenceによる発癌メカニズムが示唆されることになり、今後の十二指腸腫瘍に対する臨床治療に還元すべくdrug repositioningを含めた研究に発展できる可能性が考慮される。逆にAPC mutationと異なる機序によりWnt/βcatenin pathwayが活性化されていることが判明した場合には、分子生物学的な解析を通してその機序の特定を行い、十二指腸癌に対する分子標的薬の開発を目標とする。
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Causes of Carryover |
H30年4月現在、まだ目標症例集積に達していない。正確な遺伝子発現解析結果を得るためにはすべての検体に対して同じ条件下でRNA抽出を行い、さらに同じロットのmicroarrayを使用する必要があると判断している。そのため、目標症例数に達した後に多数の症例の遺伝子発現解析を同時に行う予定である。 目標症例数にはH30年度に達する見込みであり、H29年度の次年度使用額は全て遺伝子発現解析に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)