2017 Fiscal Year Research-status Report
腸管上皮幹細胞初代培養を用いた炎症性腸疾患における幹細胞病態解明と新規治療薬開発
Project/Area Number |
17K15930
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
西村 龍 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, プロジェクト助教 (60778132)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 初代培養 / 幹細胞機能評価 / 炎症性腸疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
代表的な消化管疾患である大腸癌や炎症性腸疾患は上皮細胞の異常により生じることが主要な病態として考えられており、Wntシグナル亢進、Notchシグナル亢進など、上皮細胞の分化制御機構の破綻が様々な腸疾患の病態と関連することを当教室では明らかとしてきた。しかしながら、幹細胞自体の制御機構破綻については未だ明らかではなく、特に炎症性腸疾患による幹細胞形質への影響については全く解析されていない。そこで本研究では、ヒト腸管上皮細胞オルガノイドを用いて幹細胞可視化を試み、幹細胞機能を動揺させる化合物を同定し、炎症性腸疾患の新規治療薬を開発することを目的とする。当研究室では初代培養系への遺伝子導入法を独自に開発し、レンチウイルスを用いて初代培養細胞に遺伝子導入する技術を確立している(BBRC 2014)。まずヒトLgr5プロモーターを抽出し、GFP遺伝子と結合させる。さらにLgr5p-GFP遺伝子もしくはCMVプロモーターを用いたCMVp-GFPを組み込んだレンチウイルスを構築する。マトリゲル内にヒト小腸・大腸オルガノイドとウイルスを同時に混入し培養ディッシュ上で固形化させる。さらに培地を添加して培養を行い、1週間後に蛍光の発光を共焦点蛍光顕微鏡にて確認する。可視化した幹細胞の機能評価法を開発することにより、IBD患者の幹細胞病態を明らかとすると共に、幹細胞機能を動揺させる化合物を同定し、上皮幹細胞を標的としたIBD新規治療薬開発の基盤を構築する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本学倫理審査委員会承認のもと、クローン病非病変部の大腸より内視鏡生検検体からヒト大腸オルガノイドを樹立した。ヒト大腸オルガノイドの炎症性サイトカイン、Toll like receptor(TLR)の発現をRT-PCRにて同定した。発現を認めたレセプターのリガンドにて刺激を行うとIL-8の発現上昇を認めた。さらに、1週間の刺激にて酸化ストレス関連遺伝子であるDuoxa2の発現上昇を認めた。応答を認めたリガンドを混合して刺激を行った所、各単剤での刺激と比較して最も大きい炎症応答を認めた。そこでリガンド混合刺激を6週間行い、炎症応答をマイクロアレイにて解析したところ、炎症関連遺伝子の上昇及び粘液形質の減少を認めた。酸化ストレス可視化及び定量化により炎症刺激による酸化ストレス上昇を認めた。さらに新規治療候補薬の添加により、炎症環境においても炎症関連遺伝子の低下、粘液形質の上昇を認め、酸化ストレスの改善を認めたことから、抗炎症作用、粘膜再生作用の効果を確認し得た。ヒトの細胞における体外炎症性腸疾患(IBD)擬似モデルを確立させるとともに、上皮細胞機能評価システムを構築できた。 また、IBD病変由来オルガノイドを樹立した。非炎症環境下で2か月以上継代培養することでVivoでの炎症の影響を除去した。潰瘍性大腸炎患者の病変部由来オルガノイドは同一患者の非病変部由来オルガノイドよりも細胞増殖能が低下していること、酸化ストレスが亢進していることを認めた。マイクロアレイにて遺伝子発現の差異を網羅的に解析したところ、病変部で特異的に発現が増加している遺伝子と減少している遺伝子を見つけた。これらの遺伝子の発現パターンが潰瘍性大腸炎患者において保存されているかを確認するために同一患者における遺伝子発現を10症例において調べた。その結果病変部特異的な遺伝子をいくつか見つけ出した。
|
Strategy for Future Research Activity |
オルガノイドにLgr5p-GFPレポーター遺伝子を導入し、幹細胞を可視化する。ヒトLgr5p-GFP陽性幹細胞をライブイメージングにて細胞分裂を観察する。共焦点蛍光顕微鏡にてオルガノイド全ての細胞を15分ごとにスキャンし、3次元にて細胞分裂を映像化する。1幹細胞から2、4幹細胞になるまでの分裂時間および分裂した細胞のクリプト内での位置制御を持続観察にて特定する。また1細胞の分裂までの時間を計測しQuiescenceの状態を解析する。すでに体外IBD擬似モデルは確立しており、炎症状態での幹細胞動態も評価する。さらにIBD患者由来のオルガノイドから幹細胞を可視化し、健常者と比較することで幹細胞病態を明らかとする。また、本学のケミカルバイオロジースクリーニングセンターが所有する小化合物ライブラリーを用いてスクリーニングを行い、Lgr5発現上昇をGFP蛍光強度で、幹細胞数をLgr5p-GFP発現細胞数で評価し、幹細胞機能を動揺させる化合物を同定する。さらにその化合物のLgr5活性部位と同定するとともに、より強い活性をもつ化合物の作成を行う。同定した化合物は大腸炎モデルマウスの治療効果により臨床応用可能な薬剤の選定を行う。
|
Causes of Carryover |
理由: 試薬等が計画当初より廉価で購入可能であったため。 使用計画: 検討する数・種類を拡大して解析を行うため、試薬を増量して購入する予定である。
|
Research Products
(5 results)