2017 Fiscal Year Research-status Report
ウイルス制御下における肝発癌・進展機構の解明と新規治療標的の探索
Project/Area Number |
17K15932
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
北畑 富貴子 (河合) 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 医員 (00755580)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 肝細胞癌 / B型肝炎 / C型肝炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は (1) 肝炎ウイルス制御下における肝発癌・進展に関わるゲノムプロファイルの網羅的解析 (2) HBV integrationをゲノム編集により導入したiPS細胞の樹立と、これを用いた癌形質獲得について細胞生物学的解析を行う事でウイルス制御下における肝発癌・進展機構の解明を行う研究を行い、本年度の実績として下記を得た。 (1)肝細胞癌患者由来検体204例の癌部と非癌部のDNAを用いてdeep sequenceを行い16遺伝子280か所の遺伝子変異を同定した。C型慢性肝炎に対してインターフェロンまたは直接作用型抗HCV薬によりHCV排除(SVR)が得られた症例ではSVRが得られなかった症例と比較してTERT promoter, CTNNB1, TP53変異の頻度に差がなかったことに対し、B型慢性肝炎に対して核酸アナログ薬を内服している症例で、血清中のHBV-DNAが検出感度未満の症例ではTERT promoter変異は全く認めなかった。またHBs抗原陽性 42例と HBV既感染49例の癌部におけるHBV integrationについて検討したところ、HBs抗原陽性のHBV integrationは42例中39例(92.9%)126か所で検出された。一方、HBV既往感染では49例中7例22か所でHBV integrationが検出された。 (2)前項の検討で得られたTERT promoter領域へのHBx遺伝子integrationを、ゲノム変異のない非癌細胞株としてヒトiPS細胞株において再現し、癌化に与える影響を解析した。実際の症例にみられたTERT locus breakpointsを再現してgenotype C HBxコンセンサス配列を入れたコンストラクトを作成し、薬剤選択遺伝子をloxP配列で除去しうる系を組み込んだtargeting vectorを作成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)肝細胞癌のウイルス制御下における遺伝子変異の解析に関しては当初の計画通り進めることができ、順調に研究は進捗している。すなわち、C型慢性肝炎からのHCC発症においてSVRの有無による遺伝子変異の差は明らかでないこと、B型慢性肝炎からのHCC発症においてHBV DNAが制御されている群ではTERT promoter変異からの発癌を認めないことを同定することができるなど、新規の知見を得た。またHBV既往感染におけるHBV integrationの頻度がHBs抗原陽性例と異なることが明らかとなり、加えて、本知見を元に、次項の研究項目にも反映して進捗させることが期待できる。今後詳細な解析を進めることでHBV既往感染における発癌機構の一端を解明し得ると考えられる。 (2)HBV integrationをゲノム編集により導入したiPS細胞の樹立に関しては、TERTとHBx配列を入れたtargeting vectorの作成が完了し、前記遺伝子カセットを有する新たな健常者由来ヒトiPS細胞株の樹立に必要な条件を検討中である。準備が整い次第、まず、目的とする変異ヒトiPS細胞株のクローン選択を行い、順次得られた細胞株を用いて肝幹・前駆細胞へ分化誘導、及び長期継代培養系を用いて、肝細胞様の形質を獲得させる。これらの次年度以降の本項の計画進展の準備は概ね完成したと言える。 以上のように、研究計画はおおむね順調に進展していると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)今後、HBV既感染における遺伝子変異、HBV integrationの解析および詳細な臨床背景因子との関連を検討することにより更に広範なウイルス制御状態での発癌過程での責任遺伝子を同定し臨床病態学的因子との関連解明を試みる。 (2)健常者由来ヒトiPS細胞株を用いて、これにCrispr/Cas9系を利用してTERTプロモーター領域に相同組換えせしめ、前記遺伝子カセットを有する新たな健常者由来ヒトiPS細胞株の樹立を進めている。複数の株を選択し、Cre蛋白の強制発現によって薬剤選択遺伝子を排除した細胞クローンを複数得る。次にiPS細胞としての品質の検証を行う。品質に問題がないことを確認した後に、得られた細胞株を肝細胞系譜に分化誘導せしめ、コントロール細胞との形質を比較する予定である。 (3)HBV陽性肝細胞癌の病態に関連する遺伝子変異とHBx蛋白の機能解析:肝発癌に関与すると考えられている宿主ゲノム変異とウイルス蛋白の関連について検討する。これまでの研究でHBV起因性肝癌では有意にTERTプロモーター変異が低頻度であったことを報告しており、一方、HBx蛋白と肝発癌との関連が指摘されているが、TERT promoter変異とHBx蛋白との関連は明らかではない。これらの相互関係についてTERT promoter配列に変異を導入したレポータープラスミド、HBx蛋白を発現するプラスミドを用いてレポーターアッセイを行うこと、さらにHBx変異蛋白を作成しTERT promoter活性に影響を与えるHBx蛋白の責任領域同定を検討する。これらの結果をもとに臨床検体を用いたHBx変異蛋白、TERT promoter変異、HBV integration部位の相互関係について統合的な解析を行う。
|
Causes of Carryover |
理由: 試薬等が計画当初より廉価で購入可能であったため。 使用計画: 検討する数・種類を拡大して解析を行うため、試薬を増量して購入する予定である。
|
Research Products
(7 results)
-
-
-
-
[Presentation] Genetic differences in hepatocellular carcinoma among chronic persistent hepatitis B virus (HBV) infection with or without viral suppression and prior HBV infection.2017
Author(s)
Kawai-Kitahata F, Asahina Y, Kakinuma S, Murakawa M, Nitta S, Nagata H, Kaneko S, Otani S, Asano Y, Inoue E, Miyoshi M, Tsunoda T, Sato A, Nakagawa M, Itsui Y, Azuma S, Tanaka S, Tanabe M, Maekawa S, Enomoto N, Watanabe M
Organizer
EASL, The International Liver Congress 2017
Int'l Joint Research
-
-
-