2018 Fiscal Year Research-status Report
改変型エクソソームを利用した新規肝硬変治療法の開発
Project/Area Number |
17K15945
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
板場 則子 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70457167)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / エクソソーム / 肝線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
温度応答性培養皿上で間葉系幹細胞(MSC)にWnt/β-catenin経路阻害剤IC-2を添加し作製する肝疾患治療用細胞シートのマウス肝表面への移植は、薬剤未処理のMSCシートよりも高い肝線維化抑制効果を示す。この線維化抑制効果は、移植した肝葉とは別の肝葉でも認められることから、IC-2により産生が亢進する細胞外分泌因子やIC-2により含有量が変動するエクソソーム中の内包因子が肝線維化抑制に有効と考えられる。 平成29年度はIC-2処理MSCの濃縮培養上清からなるセクレトームおよびエクソソームが、肝線維化の主たる要因となる肝星細胞の活性化を抑制することを明らかにした。平成30年度は、まず、IC-2処理MSCより、エクソソーム分泌阻害剤GW4869添加条件下でセクレトームを回収し、同セクレトームの肝星細胞活性化抑制効果を検討した。予想に反し、GW4869添加IC-2処理MSC由来セクレトームは、IC-2処理MSC由来セクレトームと同様に肝星細胞の活性化を抑制した。すなわち、エクソソームだけでなく、エクソソーム以外の細胞外分泌因子に、肝星細胞活性化抑制因子が含まれることが推察された。肝星細胞活性化抑制因子として報告されているMFGE8, thioredoxinに着目したところ、IC-2によりthioredoxinの産生がMSCで上昇したことから、エクソソーム以外の細胞外分泌因子の中で、thioredoxinが肝線維化抑制に関与する事が示唆された。 一方、IC-2処理MSC由来エクソソームの肝星細胞活性化抑制効果はmRNAレベルでは認められず、タンパクレベルでのみ認められたことから、今後、エクソソーム中のmiRNAの網羅的解析によりエクソソーム中の肝星細胞活性化抑制因子、肝線維化抑制因子の同定を中心に進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
エクソソームによる肝星細胞活性化抑制効果をエクソソーム分泌阻害実験で検証し、エクソソーム以外に肝星細胞活性化抑制に関わる液性因子の存在が明らかとなり、当初の予定にはない実験を加え、実験計画に遅れが生じた。しかしこれにより、肝星細胞活性化抑制作用を示す液性因子の候補としてチオレドキシンを見出すことに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により、MSCへIC-2を添加することで、MSCエクソソームよりも肝星細胞活性化抑制効果の高いエクソソームを得ることが可能であることを明らかにした。特に、遺伝子発現レベルではなくタンパク発現レベルで肝星細胞活性化抑制効果が認められるので、今後miRNAの網羅的解析を進め、エクソソーム中の肝星細胞活性化抑制因子の同定を進め、より肝線維化抑制効果の高いエクソソームの産生法の確立につなげる予定である。
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Causes of Carryover |
想定していた実験結果が得られたことで、当初の予定にはない実験を加える等の研究計画の見直しが必要となり、今年度の計画に遅れが生じた。主には網羅的解析を行うための受託解析費用として使用する予定である。
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