2017 Fiscal Year Research-status Report
分泌型イムノグロブリンが腸内微生物叢制御とNAFLD/NASH進展に果たす役割
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17K15953
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
稲嶺 達夫 長崎大学, 医歯薬学総合研究科 (薬学系), 助教 (00549628)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 腸内細菌 / IgA / 非アルコール性脂肪肝疾患 / 非アルコール性脂肪肝炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
非アルコール性脂肪性肝疾患 (NAFLD) および非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) において腸管の分泌型イムノグロブリンがどのように変化するのかを明らかにするために,C57BL/6マウスに高脂肪食を16週間与え,糞中の分泌型IgA (SIgA) 量をELISA法により測定した。事前の予想に反して,高脂肪食摂取後4から16週の時点で糞中SIgA量に変化は見られなかった。腸管SIgAレベルおよびその働きはマウスの系統間で差があることが報告されていることから,3つの異なる生産施設由来のC57BL/6マウスおよびBALB/cマウスの糞中SIgAレベルを比較したところ,系統間および生産施設間でSIgAレベルが大きく異なることが明らかとなった。先の高脂肪食を摂取したC57BL/6マウスは糞中SIgAレベルが低く,高脂肪食摂取によりSIgAレベルは変化しなかった。一方で,同一生産施設由来のBALB/cマウスは糞中SIgAレベルが高く,高脂肪食摂取によりSIgAレベルが減少する傾向が見られた。これらの結果は,NAFLD/NASHにおける分泌型イムノグロブリンの役割を調べる上で,系統間および生産施設間で見られるSIgAレベルの違いが結果に影響する可能性を示唆している。 また,分泌型イムノグロブリンがNAFLD/NASHの病態に与える影響を明らかにするためにIgAおよびIgMの分泌を担うトランスポーターであるpIgRを欠損したマウスをCRISPR-Cas9によるゲノム編集技術で作出した。系統間および生産施設間で異なるSIgAレベルの影響を考慮し,C57BL/6およびBALB/c両系統でpIgR欠損マウスを作出し,繁殖には糞中SIgAレベルが高い生産施設由来のC57BL/6マウスおよびBALB/cマウスを用いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画に沿ってC57BL/6マウスに高脂肪食を与え,糞中SIgAの変化を観察した。一方,コリン欠乏アミノ酸食誘導型NAFLD/NASHにおける糞中SIgAの変化は未だ観察していないが,これは生産施設の違いがマウスの糞中SIgAレベルの違いに影響する可能性が明らかになったためである。既に生産施設毎のSIgAレベルの情報が得られたため,SIgAレベルの違いを踏まえて実験を行う体制が整った。 また,IgAおよびIgMの分泌トランスポーターであるpIgRの欠損マウスをC57BL/6およびBALB/c両系統で作出した。当初計画ではC57BL/6系統のpIgR欠損マウスを米国より輸入し利用する予定であったが,C57BL/6およびBALB/cマウスの系統間でのSIgAの働きの差が今後の研究結果に影響する可能性が示唆されたため,両系統のpIgR欠損マウスをゲノム編集技術により作出した。そのため,欠損マウスのコロニー拡大を開始するまでに時間を要したが,既に欠損マウスのコロニーを拡大中である。
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Strategy for Future Research Activity |
薬剤誘導性の腸炎モデルにおいて糞中SIgAレベルの低いマウスは,SIgAを欠くpIgR欠損マウスに類似した表現型を示すことが報告されていることから,今後は糞中SIgAレベルの高い生産施設由来のC57BL/6およびBALB/cマウスを用いて,NAFLD/NASHモデルにおける腸管SIgAの変化を観察する。 また,既にC57BL/6およびBALB/c両系統のpIgR欠損マウスを作出したため,コロニー拡大後,NAFLD/NASHモデルマウスにおける分泌型イムノグロブリン欠損の影響を解明する予定である。 当初計画ではpIgR欠損マウスに加えてIgA欠損マウスを用いる予定であったが,どちらもSIgAを欠損するマウスであることから,データの重複を避けるため,pIgR欠損マウスでの研究を先行させ,その結果を踏また上で必要に応じてIgA欠損マウスの利用を検討する。
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Research Products
(2 results)