2018 Fiscal Year Research-status Report
TRAF6シグナルが制御するSLPIの腸管組織における恒常性維持機能の解析
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17K15954
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
園田 光 大分大学, 医学部, 病院特任助教 (40751045)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | SLPI / TRAF6 / 腸炎 / 抗生物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、腸炎の新たな分子機構の解明を目的とする。 前年度の研究で、マウスに抗生物質(アンピシリンとバンコマイシン)を投与すると、盲腸内で腸管上皮のエネルギー源となるグルタミン酸や酪酸が減少し、上皮細胞の増殖が低下し盲腸内容物が増加して便潜血陽性となることを見出した。腸内細菌叢のメタゲノム解析により、酪酸をはじめとする短鎖脂肪酸を産生するclostridialesが減少していることが明らかになった。本年度は、更に上皮細胞のアポトーシスが亢進していることを見出した。この研究成果を原著論文としてまとめ英文学術誌に投稿し掲載に至った。 一方、抗菌ペプチドSLPIの生理的機能を明らかにするため、SLPI欠損マウスにDSSを投与して腸炎を誘導し、その病態を解析した。腸炎誘導後の体重減少は、野生型マウスよりもSLPI欠損マウスで著しく、Disease Activity Indexスコアも欠損マウスで増加傾向が見られた。また、炎症性サイトカインの上昇も有意に亢進しており、病理学的解析では腸管組織への著しいリンパ球の浸潤が観察された。 また、腸管組織におけるSLPIの誘導機構をマウスモデルで明らかにするため、腸管特異的TRAF6欠損マウスの作製を試みた。そこで、Villin-CreマウスとTRAF6flox/floxマウスの交配を進めたところ、Villin-Cre: TRAF6flox/floxマウスは産まれにくい事が明らかになった。現在交配を進めて個体数を増やしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の研究で見出したマウスに抗生物質(アンピシリンとバンコマイシン)を投与する事で誘導される盲腸内のグルタミン酸や酪酸の減少、細胞増殖の低下に加え、本年度は、上皮細胞のアポトーシスが亢進していることを明らかにした。上皮細胞の増殖能の低下とアポトーシスの亢進が腸管内のホメオスタシスの破綻に繋がる事が示唆された。抗生物質の投与により減少したclostridialesの関連が考えられる。この研究成果を原著論文としてまとめ英文学術誌に投稿し掲載に至った。 一方、抗菌ペプチドSLPIの腸管組織における生理的機能を解明するために、連携研究者である大阪大学竹田潔博士より分与いただいたSLPI欠損マウスの遺伝的背景をC57BL/6系統に戻し、DSSを投与して腸炎を誘導した。腸炎誘導後のSLPI欠損マウスの体重は、野生型マウスよりも有意に低下し、Disease Activity Indexスコアと炎症性サイトカイン(IL-6, TNFα, IFNγ)の上昇は有意に亢進した。病理学的解析では腸管組織の粘膜下層への炎症細胞浸潤及び、形質細胞浸潤が観察された。 腸管特異的TRAF6欠損マウスを用いて腸管組織におけるSLPIの誘導機構を個体レベルで明らかにするため、Villin-CreマウスとTRAF6flox/floxマウスの交配を進めたところ、Villin-Cre: TRAF6flox/floxマウスは産まれにくい事が明らかになった。現在交配を進めて個体数を増やしている。 rSLPIによるIBDの病態改善効果を検討するため、大腸菌発現ベクターにマウスSLPI遺伝子をクローニングした。これを大腸菌に形質導入しrSLPIの産生を試みたところ、大腸菌の増殖が抑制されrSLPIは得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
SLPI欠損マウスにおけるDSS腸炎は、野生型マウスに比べ、炎症性サイトカインの有意な亢進を伴い増悪した。今後、腸管組織の恒常性に重要な制御性T細胞やTh17細胞、IgA産生B細胞の割合や局在を調べる。また、腸管内容物中の代謝産物等もGC-MSを用いて解析する。更に、メタゲノム解析により腸内細菌叢の変化を解析する。また、DSS腸炎モデルに加えトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)による腸炎モデルも検討する。 腸管組織におけるSLPIの誘導機構を個体レベルで明らかにするため、今後、腸管特異的TRAF6欠損マウスの個体数を増やし腸管におけるSLPIの発現レベルをリアルタイムPCR法、ウエスタンブロット法、免疫組織化学法によって解析する。また、DSSやTNBSによる腸炎を誘導したときの、SLPIの発現レベルも解析する。 大腸菌発現ベクターによるマウスrSLPIの発現効率を改善するため、コンピテントセルの検討を行う。また、昆虫細胞発現ベクターにSLPI遺伝子を導入した系でもタンパク質発現を検討する。rSLPIが得られたら、SLPI欠損マウスや野生型マウスにDSSやTNBSを投与して誘導した腸炎に対して、rSLPIを胃管投与することで腸炎を改善できるか検証する。
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Causes of Carryover |
抗生物質誘導腸炎の実験が順調に進んだ為、経費の節約に繋がった。 次年度使用分は、SLPI欠損マウスの飼育管理費や、実験消耗品に使用する予定である。
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[Journal Article] Dysbiosis of the Gut Microbiota on the Inflammatory Background due to Lack of Suppressor of Cytokine Signalling-1 in Mice.2019
Author(s)
Gendo Y, Matsumoto T, Kamiyama N, Saechue B, Fukuda C, Dewayani A, Hidano S, Noguchi K, Sonoda A, Ozaki T, Sachi N, Hirose H, Ozaka S, Eshita Y, Mizukami K, Okimoto T, Kodama M, Yoshimatsu T, Nishida H, Daa T, Yamaoka Y, Murakami K, Kobayashi T.
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Journal Title
Inflammatory Intestinal Dissease
Volume: 3
Pages: 145-154
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Oral administration of antibiotics results in fecal occult bleeding due to metabolic disorders and defective proliferation of the gut epithelial cell in mice.2018
Author(s)
Sonoda A, Kamiyama N, Ozaka S, Gendo Y, Ozaki T, Hirose H, Noguchi K, Saechue B, Sachi N, Sakai K, Mizukami K, Hidano S, Murakami K, Kobayashi T.
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Journal Title
Genes to Cells
Volume: 23
Pages: 1243-1055
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Autoimmune sialadenitis is associated with the upregulation of chemokine/chemokine receptor pairs in T cell-specific TRAF6-deficient mice.2018
Author(s)
Noguchi K, Kamiyama N, Hidano S, Gendo Y, Sonoda A, Ozaki T, Hirose H, Sachi N, Saechue B, Ozaka S, Eshita Y, Mizukami K, Kawano K, Kobayashi T.
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Journal Title
Biochemical and Biophysical Research Communications
Volume: 504
Pages: 245-250
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research