2017 Fiscal Year Research-status Report
非アルコール性脂肪性肝炎における間質細胞由来因子による線維化の解明と治療への応用
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17K15965
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
安藤 航 北里大学, 薬学部, 助教 (60586387)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪性肝炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は高脂肪食給餌(HFD)によって非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)モデルマウスを作製し、一定の経過週ごとに肝組織および血液を採取し、SDF-1/CXCR4系の発現について解析した。摘出した肝組織はホルマリン固定後にパラフィルム包埋処理を行い、薄切切片を作成し脂肪肝および肝線維化の進行度を確認した。また、得られた肝組織はホモジナイズ後にクッパー細胞を単離し、フローサイトメータを用いて解析したところ、経時的なHFD給餌によってKupffer細胞表面のCXCR4の発現量が増えることが明らかとなった。また、血液中のALTがHFD給餌によって上昇を示し、また、血清中SDF-1α濃度も上昇することが示された。研究期間中の成果としては、HFD給餌によるNASHモデルマウスは確かにALTの上昇や脂肪肝形成が進行し、NASHに極めて類似した病態を示すことが確認された。また、HFD給餌の経過に伴ってKupffer細胞表面のCXCR4の発現量と血清中のSDF-1α濃度が正の相関を示したことから、NASHの病態ではSDF1/CXCR4系のシグナル伝達が亢進していることが予想された。肝硬変への進展にはコラーゲンの産生に寄与する肝星細胞の活性化が重要であり、Kupffer細胞は肝星細胞の活性化を促すことで肝線維化を促進させると考えられている。本研究で得られた成果によって、SDF1/CXCR4系はNASHにおける肝線維化やKupffer細胞および肝星細胞への関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度はNASHのモデル動物の作製とその解析を目的とした。NASHモデル動物での実験は、高脂肪食給餌は12週間継続的に実施し、その間に一定週ごとに肝組織および血液の採取を行ったのちにSDF1/CXCR4系のシグナル伝達について解析する計画であり、予定していた実験はすべて順調に実施出来た。しかしながら、研究年度後半で計画していた Lys-M CreマウスとCxcr4 flox/floxマウスの導入に遅れが生じたため、「(3)やや遅れている。」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度では、遅れているLys-M CreマウスとCxcr4 flox/floxマウスの導入を進め、実験に適するコンディショナルノックアウトマウスの作製を実施する。すなわち、Lyzozyme M遺伝子プロモーター制御下でDNA組換え酵素(Cre)を発現するLys-M Creマウスと、Cxcr4 flox/floxマウスを掛け合わせることでLys-M Cre-Cxcr4 flox/floxマウスを作製する。その後、平成29年度と同様の方法で高脂肪食給餌を用いたNASHモデルマウスの作製をこの遺伝子改変マウスで実施する。高脂肪食給餌は肝線維化の初期から終末期までに経時的に行い、一定週ごとに遺伝子改変NASHモデルマウスの肝組織および血液を採取する。採取された肝組織からKupffer細胞を単離し、フローサイトメーターによってCXCR4の発現量を観察する。また、血液中のSDF-1濃度及び炎症性サイトカイン濃度の測定を実施する。これらを組み合わせることで、SDF1/CXCR4系のシグナル伝達が抑制された際のNASH病態の変化や炎症性サイトカイン及びNFκB経路の活性化因子についてmRNAの定量を中心とした遺伝子発現解析を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
平成29年度の予算執行は動物実験に必要な動物の導入に遅れが生じたため次年度使用額が生じた。平成30年度において遅れていた実験動物の導入ならびに実験に次年度使用額分を使用する予定である。
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