2018 Fiscal Year Research-status Report
非アルコール性脂肪性肝炎における間質細胞由来因子による線維化の解明と治療への応用
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17K15965
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
安藤 航 北里大学, 薬学部, 助教 (60586387)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪性肝炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はSDF-1の受容体であるCXCR4のマクロファージ特異的コンディショナルノックアウトマウスの作製を実施した。実験動物供託施設より入手したLysM-CreマウスとCxcr4^flox/floxマウスについて、それぞれ繁殖を行い必要な遺伝子条件となるように交配を進めた。それぞれのマウスにおいてヘテロ同士を交配させ誕生した子マウスの尾からDNAを抽出し、遺伝子型を確認した。LysM-CreマウスおよびCxcr4 floxマウスの両方で遺伝子型を同定できるPCR条件を確立させた。現在はLysM-Cre KI/+, Cxcr4^flox/+の両遺伝子を持つマウスの誕生を確認し、この遺伝子を持つマウス同士の交配を進めているが、交配が難航したため、当初の計画から遅れが生じた。そこで、すでに作製し繁殖を進めていたCxcr4^ flox/floxマウスの骨髄より骨髄芽球を採取し、マクロファージへ分化誘導を行い、Creを細胞外から導入することでin vitroの系としてマクロファージにおけるCxcr4の特異的欠損させることに成功した。このCreを導入したマクロファージに対していくつかの脂肪酸を培養上清に添加し、24時間培養し細胞への障害度やサイトカインおよびケモカインの分泌について経時的な変化を解析した。添加した脂肪酸はマクロファージの内部に取り込まれることをオイルレッド染色によって確認した。さらに採取した培養上清について、ELISAを用いてサイトカインおよびケモカイン濃度を観察したところ、脂肪酸を添加することによってCXCR4を欠損したマクロファージにおいていくつかの炎症性サイトカインが有意に増加していることを明らかにした。本研究で得られた成果によって、SDF1/CXCR4系は脂肪酸による細胞障害や炎症の調節を介していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度は、Lys-M CreマウスとCxcr4^ flox/flox マウスを掛け合わせることでマクロファージ特異的Cxcr4欠損マウスを作製し、高脂肪食給餌を行うことでNASHモデルにおけるCXCR4の機能解析を実施する計画であった。しかしながら、Lys-M CreマウスおよびCxcr4^flox/floxマウスの繁殖および交配に遅れが生じ、実験に導入できる動物の確保に難航した。 コンディショナルノックアウトマウスの作製が遅延したため、in vitroにおいてCxcr4^ flox/floxマウスの骨髄由来マクロファージに対して、Creを細胞外から導入することでマクロファージにおけるCxcr4の機能解析を実施できる手法を確立させた。Cxcr4が欠損したマクロファージに対して脂肪酸を添加することでいくつかのサイトカインおよびケモカイン濃度が変化することを確認した。しかしながら、予定していたコンディショナルノックアウトマウスの作製に遅れが生じているため、「(3)やや遅れている。」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度では、遅れているLys-M CreマウスとCxcr4^flox/floxマウスの繁殖と交配を進め、コンディショナルノックアウトマウスの作製を継続する。その後、平成30年度で計画していた高脂肪食給餌を用いたNASHモデルマウスの作製をこの遺伝子改変マウスで実施し、NASHモデル動物における肝硬変形成過程におけるCXCR4を介したシグナル伝達について、肝組織および血液サンプルを用いて解析する。
また、研究代表者はコンディショナルノックアウトマウスの作製に時間を要していたため、in vitroにおいてCxcr4^flox/floxマウスの骨髄由来マクロファージに対して、Creを細胞外から導入することでマクロファージにおけるCxcr4の機能解析を実施できる手法を確立した。今後は、in vivo実験の準備を並行して進めつつ、骨髄由来マクロファージにて脂肪酸の添加や細胞障害の誘導を介してNASHにおけるCXCR4の機能解析を予定している。
これらを組み合わせることで、SDF-1/CXCR4系のNASHの病態にあたえる影響について細胞内シグナル伝達や炎症性サイトカイン及びケモカイン中心とした解析を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
2018年度の予算執行は動物実験に必要な動物の導入に遅れが生じたため次年度使用額が生じた。2019年度において遅れていた実験動物の導入ならびに実験に次年度使用額分を使用する予定である。
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