2019 Fiscal Year Research-status Report
肝疾患における遊離脂肪酸のオートファジー調整機序の解明
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17K15977
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
荻野 学芳 高知大学, 医学部, 客員助教 (70614204)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | オートファジー / 肝細胞 / 遊離脂肪酸 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
肝細胞において、飽和脂肪酸によるオートファジー障害に対して不飽和脂肪酸が改善効果を持つこと、その機序に小胞体カルシウム輸送タンパク質の筋小胞体ATPアーゼ(SERCA)によるカルシウム濃度調整機構が関わるという知見が、国際誌Experimental cell researchにアクセプトされた。 高脂肪食負荷による脂肪肝マウスの肝組織では、SERCAの他の小胞体カルシウム調整タンパク質であるイノシトールトリスリン酸受容体(IP3R)およびリアノジン受容体(RYR)についても、遺伝子発現の変化がなかった。肝培養細胞において、カルシウムキレートやSERCA活性剤gengerolは、飽和脂肪酸によるオートファジー障害を軽減しなかった。この2つの結果から、小胞体カルシウム濃度の変化は、脂肪毒性による細胞障害の原因ではなく、結果であると考えられた。 一方、肝培養細胞への飽和脂肪酸の影響について、オートファジーとも関わる酸化ストレス関連遺伝子を解析したところ、HO-1やアルギナーゼの上昇とGPX-4の低下が見られた。とくにHO-1については、高脂肪食負荷による脂肪肝モデルの肝組織でも遺伝子発現が上昇しており、飽和脂肪酸の直接静脈投与モデルマウスの肝組織では、抗酸化酵素群の中で唯一上昇していた。これらの結果をさらに深く分析して、遊離脂肪酸のオートファジー調整と酸化ストレスについて分析していく方針とする。 飽和脂肪酸はオートファジーを障害するが、n-3多価不飽和脂肪酸はオートファジーを促進する。しかし、分解基質であるp62や脂質過酸化マーカーはいずれも上昇する。酸化ストレスとオートファジーをつなぐNrf2、p-p62とKEAP-1といった分子シグナルについて詳細な解析をすることで、オートファジー調整作用の違いの要因が明らかになるかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年11月から急遽、教室の方針がかわり、実験系研究の継続をするためには他の研究機関への移行が必要となったため、その検索と移行に時間を要した。また、3月からコロナウイルス感染拡大の影響もあり実験が遅延した。
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Strategy for Future Research Activity |
遊離脂肪酸のオートファジー調整機序について、酸化ストレスを中心に解析していく予定である。HO-1は脂肪毒性の一つである酸化ストレスに対して重要な働きをもつと考えられ、オートファジーの調整機構とあわせて、HO-1のノックダウンや強制発現系でも解析を行っていく。アルギナーゼについては、オートファジーの必須遺伝子であるATG7のKOマウスで、アルギニン代謝に関わるフェノタイプが報告(Poillet-Perez L et al.Nature 2018)されており、eNOSとの競合によるNO代謝調整によって酸化ストレスとも強く関連していることから、アルギニン代謝やNOxを中心に培養細胞およびマウスモデルでも解析していく。GPX-4の低下についてはn-3多価不飽和脂肪酸(EPAやDHA)による癌細胞死でも同様の機序があるのかどうかを確認予定である
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Causes of Carryover |
研究機関の移行による遅延から、実験機器の再セットなどに時間を要した。また、小胞体カルシウム関連タンパク質についての結果が予想していた結果と違ったため、オートファジーの調整に関わる他の因子、酸化ストレスの解析へとシフトしていることから時間を要した。
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Research Products
(5 results)