2017 Fiscal Year Research-status Report
mitoNEETによるクリスタ構造維持をターゲットとした新規心不全治療応用
Project/Area Number |
17K15979
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
降旗 高明 北海道大学, 大学病院, 医員 (60782505)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
HEK293細胞においてmitoNEETタンパクの過剰発現系を作成し、免疫沈降後の検体を用いて質量分析を行ったところ、mitoNEETと相互作用を有するタンパクの候補の一つとして、ミトコンドリア内膜に局在する、MICOS複合体を形成する一つであるタンパクXをin vitroのレベルで同定した。さらに、若齢の野生型マウスの心筋をホモジナイズした抽出液を用いてin vivoでの免疫沈降法を行ったところ、実際にタンパクXとの内因性に相互作用を有することを確認した。 mitoNEET欠損マウスにおいては、mitoNEETとミトコンドリア内膜タンパクXの相互作用が理論的には消失することが予想される。心筋特異的mitoNEET欠損マウスの心筋におけるミトコンドリアの電子顕微鏡像では、クリスタ構造は崩壊し、形態学的な異常を呈していた。高感度ミトコンドリア呼吸測定装置を用いた呼吸能の評価では、mitoNEET欠損マウスおけるミトコンドリアの機能障害は明らかであった。mitoNEET欠損マウスおいて、形態学的な異常と、機能的な異常が同時に起こっており、形態学的な異常が先行して機能異常が起こっていると示唆された。また、形態学的異常が機能的異常に結びつく機序については、高齢のmitoNEET欠損マウスのミトコンドリアにおける解析において、電子伝達系を構成するミトコンドリア呼吸鎖複合体の形成が低下している可能性を見出した。また、高齢の心筋特異的mitoNEET欠損マウスの生理学的な評価において、左室収縮障害は明らかで、心不全を呈していることも明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
主に野生型、また心筋特異的mitoNEETノックアウトマウスを使用したin vivoの実験が順調に進んでいる。特に、この研究の最も重要な点である、mitoNEETと相互作用するミトコンドリア内膜の新規蛋白を同定した。 しかし、この過程に時間を要したため、病態モデルでの検討にまでは至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
心不全モデルを用いて病態におけるmitoNEETの役割の解析を予定している。具体的には横行大動脈縮窄による圧負荷モデルを作成し、心肥大、心機能障害の発症・進展過程におけるmitoNEETを介した形態ならびに機能の解析を行い、不全心筋におけるmitoNEETの形態ならびに機能維持における意義を明らかににする。また、培養心筋細胞mitoNEET遺伝子導入実験を行い、mitoNEETを介した不全心筋への治療介入を検討する。さらに心不全モデルマウスへのmitoNEETへの介入による、新たな心不全予防・治療法の開発を進める。
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