2017 Fiscal Year Research-status Report
脂肪前駆細胞が引き金を引く老化・肥満に伴う慢性炎症の分子機序解明
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17K15985
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
幸 龍三郎 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任研究員 (20779897)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 老化 / 肥満 / 慢性炎症 / 脂肪 / エピゲノム / 分化 / 炎症老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界的に肥満者数と高齢者数は増加しており、社会保障費の増大が懸念されるなど、肥満および老化に伴う生活習慣病発症機構の解明と治療法の確立が強く求められている。肥満や老化に伴って糖尿病や心不全など心血管代謝疾患の発症率は増加し、その病態基盤の一つとして慢性炎症が近年注目を集めている。特に、高齢者では炎症マーカーの増加がみられるなど、老化と炎症の連関は炎症老化inflammagingと呼ばれる。慢性炎症は組織リモデリングをもたらし非可逆的な組織機能異常を誘導するが、なぜ加齢や肥満に伴って炎症が誘導されるのかその根本的な分子機序はほとんど分かっていない。我々はこれまでに、内臓脂肪に端を発した炎症シグナルが膵島に拡大・波及することで糖尿病を誘導することを明らかとした。興味深いことに、高脂肪食負荷のごく初期から内臓脂肪に集積し炎症性サイトカインを分泌する新たな細胞を見出した。この新規炎症誘導細胞はケモカインを分泌することで炎症性の単球を内臓脂肪に誘引し、マクロファージとして定着させることで内臓脂肪組織炎症の引き金を引くことが分かった。脂肪組織内に血管新生も誘導することから、新たな脂肪細胞新生を支持することで脂肪組織拡大をサポートしていると考えられる。さらに、この炎症性細胞は老化とともに内臓脂肪組織に蓄積することが明らかとなり、加齢に伴う炎症の誘導に関わっている可能性がある。この炎症誘導細胞を含めた脂肪組織中の細胞をRNA-seqによって解析したところ、脂肪幹細胞や脂肪細胞、マクロファージと異なるトランスクリプトームを持つユニークな細胞であることが分かった。さらにこの炎症誘導細胞に特異的な遺伝子を数種類同定できた。本研究から全く新たな老化・肥満がもたらす慢性炎症のトリガーとなる機序解明に繋がると考えられる
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々が見出した新規炎症誘導細胞のRNA-seqの結果、特異的な表面マーカーや転写因子群を同定することができた。現在、ノックアウトの系を確立するとともに、起源となる細胞の絞り込みを行っており、その分化機構に関しても介入を試みるなどほぼ順調に解析が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
老化や肥満がどのように新規炎症細胞の蓄積をもたらしているのか、遊離脂肪酸などの液性因子の関与を明らかにするとともに、内因的な老化に伴うDNA損傷応答系の関与を明らかにする。当初の研究計画に沿った形で研究を進めるが、新規炎症細胞の起源を同定し、その分化機構を明らかにするためにシングルセルレベルでの解析を視野に入れて研究を行う予定である。
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Causes of Carryover |
効率的かつ計画的な物品の調達によって次年度に繰り越すことができたため 次年度に繰り越して物品費用として使用予定
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