2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K15988
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邉 綾 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (10647887)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マクロファージ特異的Arid5bノックアウト / 腫瘍関連マクロファージ / 血管新生 / 網羅的遺伝子発現検索 |
Outline of Annual Research Achievements |
転写因子Arid5bについて、炎症反応ならびに血管新生における役割・制御機構を解明することを目的とし、平成29年度にはマクロファージ特異的Arid5bノックアウトマウスに腫瘍を皮下移植し、その腫瘍内より腫瘍関連マクロファージ(TAM)を分離しmRNAを抽出した。 平成30年度は、抽出したmRNAを用いた網羅的遺伝子発現検索ならびにArid5bの標的遺伝子を探索した。 2. 腫瘍免疫細胞における網羅的遺伝子発現検索 前年度に抽出したmRNAを用いて次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子発現検索を行った。結果については、GSEAを用いて解析を行った。GSEAとは、網羅的に調べた遺伝子の有意な発現差を遺伝子の機能ごとのグループに分けるもので、複数の遺伝子の発現上昇ないし低下が協調して起こることでその機能をもたらすという考え方に基づくものである。その結果、血管新生に関する遺伝子群、炎症反応に関する遺伝子群、低酸素反応に関する遺伝子群などで有意な差を認めた。前年度の実験により、腫瘍内の新生血管に差が生じることが観察されているため、血管新生に関する遺伝子群に着目し、その中に含まれる複数の遺伝子についてPCRで実際に有意な発現差を確認した。 3. ARID5B蛋白の標的遺伝子の同定 ARID5B蛋白の標的遺伝子を同定する目的で、クロマチン免疫沈降(ChIP)を行った。TAMを用いて実験を行う予定であったが、マクロファージ特異的Arid5bノックアウトマウスは一度に出産する個体数が少ない傾向があり、実験個体を得るために十分な個体の繁殖が困難であったため、同マウスの腹腔マクロファージを作成し、この細胞を用いてChIPを行った。また、ChIPで得られた遺伝子については次世代シーケンサーを用いて網羅的に調べた。この結果、cFosのプロモーター領域に有意な濃縮を認め、Arid5bの標的遺伝子の候補とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
炎症および腫瘍血管新生における転写因子Arid5bの役割・制御機構を解明する目的で、動物実験を行っている。 マクロファージ特異的Arid5bノックアウトマウスに腫瘍を移植し、腫瘍内の腫瘍関連マクロファージを採取する必要があるが、このマウスは一度に出産する個体数が少ない傾向があり、実験には同腹のオスマウスを用いる必要があるため、実験個体を得るために十分な個体の繁殖に時間を要した。 当初は平成30年度内に行う予定であったChIP PCRによる蛋白遺伝子間結合の確認およびルシフェラーゼレポーターアッセイによる検証については、平成31年度まで期間を延長し、今年度行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に次世代シーケンサーを用いてARID5B蛋白とcFOS遺伝子との結合が確認され標的遺伝子候補とした。 次年度は実際にChIP PCRで両者の結合を確認するとともに、cFOS遺伝子のmRNA内にあるARID5B蛋白標的配列をルシフェラーゼ遺伝子配列の下流に挿入したベクタープラスミドを作成し、Arid5b発現ベクタープラスミドと共に導入し、ルシフェラーゼ活性強度を比較することで検証する。 さらに、Arid5b遺伝子の遺伝子制御について、ARID5B蛋白のmRNA分解における役割についても検証したい。マクロファージ特異的Arid5ノックアウトマウスの腹腔マクロファージを採取し、アクチノマイシンDによりRNA合成を停止した後、qPCRでmRNAの分解速度を野生型と比較する。
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Causes of Carryover |
炎症および腫瘍血管新生における転写因子Arid5bの役割・制御機構を解明する目的で、動物実験を行っている。 マクロファージ特異的Arid5bノックアウトマウスに腫瘍を移植し、腫瘍内の腫瘍関連マクロファージを採取する必要があったが、このマウスは一度に出産する個体数が少ない傾向があり、実験には同腹のオスマウスを用いる必要があるため、実験個体を得るために十分な個体の繁殖に時間を要した。これにより実験進捗が遅延したため、2019年3月20日まで計画を延長し、それに伴い次年度使用額が生じた。
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