2017 Fiscal Year Research-status Report
三次元イメージングを基盤とした心臓弁複合体の診断法確立と新規治療法の開発
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17K16008
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
宇都宮 裕人 広島大学, 病院(医), 助教 (10778492)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 構造的心疾患 / 三次元心エコー / 経皮的僧帽弁形成術 / 三尖弁閉鎖不全症 / 経皮的大動脈弁留置術 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず,後ろ向き研究として,『既存の三次元経食道心エコーデータベースを用いた僧帽弁クリップに関する検討』について解析をおこなった。その結果,僧帽弁クリップを施行する際に,クリップ留置直後に三次元心エコーを用いて2つに分離した弁口面積をそれぞれ正確に測定し,合計を術後弁口面積としたところ,術後弁口面積が1.94 cm2を下回ると,慢性期の肺動脈圧低下効果が小さいこと,ひいてはそれが心臓死+心不全入院の複合エンドポイントを上昇させることを見出した。この効果は,平均圧較差5mmHg以上,残存逆流う中等度以上,などで調整後も有意であり,クリップ術後僧帽弁狭窄に対する注意喚起をうながす重要な所見であると考えられた(英文雑誌投稿・アクセプト済み)。さらに,この後ろ向きデータ研究から,機能性僧帽弁閉鎖不全症に対して僧帽弁クリップ術を施行した場合,弁形態の変化(弁輪縮小効果,テザリング減少効果など)をきたし,この形態変化を介して逆流量減少に繋がることも見出している。さらにこの形態変化は,central pattern, eccentric patternといった逆流ジェットのサブタイプによって異なり,central patternのジェットではクリップによる弁輪の前後径減少や弁接合面積増加が逆流減少と密接に関わる。一方でeccentric patternのジェットでは,クリップによる前尖-後尖テザリング角度差の是正が主に逆流減少の主要因である。これらの情報は,手技改善につながる(central patternでは中央を強く把持する事が重要である一方,eccentric patternでは逆流弁口の位置・テザリング角度差が最も大きい箇所を正確に同定しそこをクリップで把持することが重要,といった事項)。 次いで,『新たな前向きコホート研究の遂行』にも取り掛かっており,症例登録および現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたプロジェクトのうち,後ろ向き研究については解析終了し論文を2本投稿・うち1本はAmerican Journal of Cardiologyにアクセプトされている。また,前向き登録研究についても患者登録は,TAVI症例が30症例,三尖弁閉鎖不全症が150症例を超え順調である。こちらは同時進行で三次元解析を行っており,来春までの論文化を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,前向き研究の症例登録を進める。TAVI症例については,術後半年において三次元経食道心エコー再検を行っており,術中の拡張不全が慢性期人工弁機能におよぼす影響について解析する。三尖弁閉鎖不全症例については,三次元心エコーによる弁スクリーニング法により逆流原因の詳細な分類を進め,各サブグループ毎の弁複合体形態の特徴を明らかにしていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
TomTec社製の三次元解析ソフトを購入予定であったが,日本の取り扱い代理店が2018年4月に変更になる事情があり,購入後のアフターケアの事を考え,2018年度に購入する方針とした。このため,約97万円を2018年度に繰り越しさせていただき,当初の予定通りに解析ソフトを購入し,研究を継続する予定である。
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