2017 Fiscal Year Research-status Report
心不全患者におけるNeprilysin濃度決定因子および予後への影響に関する研究
Project/Area Number |
17K16015
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
高潮 征爾 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (50573599)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 心不全 / ネプリライシン / ナトリウム利尿ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の分解に関連するNeprilysin(NEP)濃度がどのような因子によって規定されているか、心臓から放出されているのか、血行動態やBNPの値と相関があるか予備検討を行った。対象は13名の心不全患者。冠静脈洞、大動脈基部、大腿静脈の3カ所より採血を行い、血清NEP濃度を測定した。2名は測定感度以下であり11名で検討を行った。大腿静脈でのNEP濃度は中央値で198.8 pg/mlであるが、冠静脈洞(171.3 pg/ml)と大動脈基部(207.5 pg/ml)の血清NEP値と有意差はなかった。今回の検討でBNPや血行動態を含め、NEP濃度と相関する因子は確認できなかった。冠静脈洞のNEP濃度が大動脈基部より高値である(心臓からNEPが分泌されていると考えられる)症例は4名であったが、それを規定する因子については症例数が少なく検討できていない。2017年に収縮不全心不全では末梢血管の静脈血と比較して、冠静脈洞におけるNEP濃度上昇が見らられたことから、左室収縮力が低下した心臓からNEPが産生されるという内容の論文が報告された。我々も左室駆出率が保持されていた症例と低下していた症例の2群に分けて心臓からのNEP産生の有無を検討したが有意な結果は確認できなかった。今後症例数を増やしたり、左室駆出率の低下した症例に対象をそろえるなどを行い上記の検討を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
患者の選定、検体の集積はおおむね順調であるが血清Neprilysin測定を行うELISAキットの安定性の問題や広く研究者が使える信頼性のおける測定系が十分に確立されておらず、どのような方法で血清Neprilysin濃度を測定するか。それともNeprilysin活性を測定するべきなのかを検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
多岐にわたる心不全の原因疾患の中で対象を拡張型心筋症に対象を絞るなどして患者群をそろえることで患者側の要因をなるべくそろえるようにすると共にさらに症例数を増やしていき研究目的が達成できるように研究を進めていく。十分な症例が蓄積されたら、まとまった症例の血清Neprilysin濃度を測定し、血清Neprilysin濃度に寄与する因子や予後に与える影響を検討する。2017年に心臓移植を行った症例において心臓からNeprilysinが分泌されているという報告がなされている。そのような重症患者においての検討は困難ではあるが、より重症な症例において冠循環中に放出されるNeprilysinが増加するのかも知れない。この点を明らかにできるように患者選択を行いたい。
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Causes of Carryover |
血清Neprilysin濃度を測定するためのELISAキット購入を見送ったため物品費が予想よりも低額であった。
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