2017 Fiscal Year Research-status Report
心不全の発症・進展における心筋ミトコンドリア鉄恒常性の役割の解明
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17K16016
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 達也 札幌医科大学, 医学部, 助教 (40592473)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 鉄代謝 / 心不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアにおける鉄代謝異常は、細胞障害性の強い活性酸素種の産生と関連し心不全の治療標的となりうると考えられるが、心筋ミトコンドリアにおける鉄代謝の詳細は未だに不明な点が多い。本年度は、収差補正走査型電子顕微鏡Titanを用いたエネルギー分散X線分光法(EDS)により、鉄デキストラン2週間投与による鉄過剰マウスおよびドキソルビシン心筋症マウスにおけるミトコンドリアの鉄のマッピングを評価することで、従来困難であった心筋ミトコンドリアの鉄の局在について検討した。鉄過剰マウスでは、Ferrozin法により生化学的に定量評価した心筋ミトコンドリア分画における鉄の含有量は、コントロールマウスに比して有意に増加していたが、EDSによる鉄のマッピングでは、鉄はミトコンドリアにおいて特定の領域に凝集することなく、コントロールマウス同様にクリステおよびマトリックス内に多く局在した。以上より、少なくとも数週間のミトコンドリア外からの鉄の増加に対して、適切な鉄輸送システムにより、ミトコンドリアにおいて細胞障害性の活性酸素種を触媒しうる鉄の凝集を回避していることが示唆された。一方、ドキソルビシン心筋症マウスでは心筋ミトコンドリアにクリステの減少を認めたが、構造的な変化とEDSによる鉄の分布に明らかな関係性を認めず、特定の領域への鉄の凝集も確認できなかった。今後、ミトコンドリア鉄のトランスポーターであるABCB8ノックアウトマウスの心臓や、心筋症患者の検体を用いて、ミトコンドリアの鉄の分布、形態異常、心機能との関連を明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
収差補正走査型電子顕微鏡Titanを用いたエネルギー分散X線分光法(EDS)によるミトコンドリアの鉄の評価法は順調に進んでいる。今年度はミトコンドリア鉄代謝の障害と構造異常、小胞体ストレスやオートファジーとの分子的な関連についても検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は概ね予定通り進んでおり、今年度は研究計画書の通り、ミトコンドリア鉄代謝障害と細胞死、オートファジーとの関連について、更に研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
電子顕微鏡Titanの使用料が予定よりも安く済んだこと、電子顕微鏡標本作成にかかる費用が抑えられたことが挙げられる。費用が削減できた分、次年度使用予定の分子アッセイのための試薬、動物購入費、情報交換・成果発表のための出張旅費に充てる予定である。
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