2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a treatment for pulmonary arterial hypertension focusing on inflammatory endothelial dysfunction
Project/Area Number |
17K16033
|
Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
稲垣 薫克 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 研究員 (20638366)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 肺動脈性肺高血圧症 / 肺血管リモデリング / 炎症 / Interleukin-6 / 右心不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の発症、ならびにPAHに続発する右心不全の発症には肺および冠動脈血管における炎症性内皮障害が関与するという仮説を検証するため、重症肺高血圧症ラットモデル(SuHx)を対象に、1)肺血管リモデリングおよび右心不全発症における炎症性シグナルの分子機序についてinterleukin-6(IL-6)に着目して検討し、2)IL-6阻害によるPAHの新規治療法の開発を目指すものであった。平成30年度は、CRISPR-Cas9の系で作成したIL-6ノックアウト(KO)ラットを用いて、SuHxモデルのPAH病態が抑制されるかについての検討を行った。その結果、SuHxモデルではWTラットにおいて右心室収縮期圧(RVSP)が100mmHgまで顕著に増加したが、IL-6KOラットではおよそ60mmHgまで著明に抑制されたことを確認し、肺血管リモデリングも抑制されることが確認された。また、エンドセリン受容体拮抗薬のマシテンタンをIL-6KOラットに投与した場合では、RVSPがおよそ30mmHg程度にまでに改善し、PAH病態が著明に抑制されるといった相加的な効果を確認することができた。また、平成29年度で明らかにしたSuHxモデルラットにおける右心機能および右冠動脈血管拡張機能の低下が、3週間のマシテンタン投与により、MRIによる右心機能評価では駆出率の有意な改善がみられ、FDG-PET検査では右心および左心室の糖代謝亢進が正常レベルまで回復することが明らかとなった。また、SuHxモデルラットで減弱した右冠動脈の内皮依存性およびNO応答性の血管拡張応答が、マシテンタン治療により有意に改善することが明らかとなった。以上の結果から、PAHの発症およびPAHに続発する右心不全の発症には炎症シグナルのIL-6が関与することが示唆された。
|