2018 Fiscal Year Research-status Report
EGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子変異陽性肺癌における遺伝学的機序の解明
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17K16037
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
東出 直樹 東北大学, 大学病院, 助教 (00732223)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | EGFR遺伝子変異 / 肺癌 / エクソンシークエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
EGFR遺伝子変異陽性肺癌は、①腺癌、②アジア系人種、③女性、④非喫煙者といった臨床背景をもつ患者に高頻度で生じていることが知られている。近年の分子 遺伝学の進歩に伴い、肺癌に関連した体細胞変異が数多く同定されてきているが、KRAS遺伝子変異やEML4-ALK遺伝子変異などの他の体細胞変異に比べて、EGFR遺 伝子変異陽性の肺癌患者は2倍以上の肺癌家族歴を有するとした報告もある。EGFR遺伝子変異陽性肺癌がこのように明らかな「人種差」、「性差」そして「家族歴」を有することは、その発生母地に比較的effect sizeの大きな何らかの遺伝学的素因があること、そしてそれは体細胞変異ではなく家族間に遺伝しうる生殖細胞レベルの遺伝子変異である可能性を示唆している。 本研究では、EGFR遺伝子変異陽性肺癌の発生する遺伝学的機序を明らかにすることを目的とする。次世代シークエンサー(Hiseq2000システム,Illumina社)を使用して、EGFR遺伝子変異陽性肺癌が集積している5家系の患者13人、家系内未発症者5人および健常者2人の計20名のエクソーム解析を行った。SureSelect Human All Exon 51 Mbキット(Agilent社)を用いて,抽出した末梢血DNAからエクソン部分のみを捕捉・濃縮して,Hiseq2000により生成された約100塩基長のペアリードをヒトゲノムの参照配列 (UCSChg19)にマッピングして、ヒト全エクソンの99.86%(総塩基長51Mb)の解析を行った。その結果、現在ある遺伝子Aに着目して機能解析を進めている。 また、EGFR遺伝子変異陽性肺癌の家族例だけでなく孤発例の検体収集も並行して行い、約400例の末梢血DNAの抽出も終了している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初研究計画では、EGFR遺伝子変異陽性肺癌の家族例2家系の患者6名に対してヒト末梢血検体からエクソンシークエンスを行う予定であったが、新たに3家系の患者6名と家族内未発症者の検体が蓄積されたため、その結果追加の検体処理や遺伝子解析を行う必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
①家族内集積症例のエクソーム解析のデータ解析として、遺伝子機能に変化を与える変異(ミスセンス、ナンセンス、スプライス異常、挿入欠失)の中から,dbSNPと1000 Genomes Projectで既知の変異を除外し、それぞれの肺癌集積家系内に共通するが家系内未発症者には認められない変異を探し出す。②EGFR遺伝子変異陽性肺癌の孤発例を集め,一塩基多型と構造多型を基に,疾患に関連する遺伝子領域を絞り込む。③上記の解析から同定された遺伝子Aの変異cDNAを発現するベクターを構築し,ヒト肺癌細胞株へ遺伝子導入し,EGFRシグナルへの影響をウエスタンブロットで評価する。
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Causes of Carryover |
研究代表者が2017年12月から2018年7月末までの8ヶ月間を地域の病院へ出向となったこともあり、今年度予定していた実験を遂行できなかった。本研究補助事業期間を1年間延長し、予定していた実験を含め次年度で研究を完結する予定である。
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