2017 Fiscal Year Research-status Report
悪性胸膜中皮腫に対するネクロプトーシス誘導と抗癌剤耐性機構との関連性の解析
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17K16040
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
石綿 司 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (50791480)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 悪性胸膜中皮腫 / ネクロプトーシス / 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性胸膜中皮腫はアスベスト曝露と密接に関連し,壁側胸膜の中皮細胞から発生する極めて予後不良の腫瘍である.今後わが国で増加すると予想されている悪性腫瘍のひとつである.しかしながら,悪性胸膜中皮腫に対する有効な治療法の確立は遅れている. ネクロプトーシスは,細胞死の一つの形態であり,「プログラムされたネクロ―シス(壊死)」とも呼ばれる.これまでネクロ―シスは,プログラムされない偶発的におこる細胞死と認識されてきた.しかし近年,RIPK1とRIPK3とよばれるキナーゼの活性依存的に誘導される,ネクローシス様の細胞死の存在が明らかにされ,「ネクロプトーシス」というプログラムされた細胞死として認識されるようになってきた.我々はこのネクロプトーシスに注目し,悪性胸膜中皮腫の治療オプションになり得るかを探索する. 悪性胸膜中皮腫の細胞株(野生株)と我々が樹立したシスプラチン耐性株を用い,ネクロプトーシス誘導の可否を比較した.ネクロプトーシス誘導方法にはpan-caspase inhibitorおよびSmac mimeticを併用する既知の方法を用いた.結果として,野生株と比較し,耐性株においてネクロプトーシス誘導による細胞死が優位に多く生じていた.耐性株においてRIPK3およびMLKLの発現が亢進されていた.薬剤耐性悪性中皮腫細胞においてネクロプトーシスが誘導されやすいことが明らかとなり,かつネクロプトーシス経路構成蛋白であるRIPK3およびMLKLの発現亢進が誘導効率と相関があることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
悪性胸膜中皮腫細胞株2種,およびそれらに対しシスプラチン持続曝露により樹立した耐性株2種を用意した.ネクロプトーシス誘導方法として知られているTNF-α,IAPアンタゴニスト,caspase-8阻害の併用を参考に,IAPアンタゴニストとしてBV-6,caspase-8阻害としてZ-VADを用いた.TNF-αを用いた3薬剤の組み合わせのうち,最も効率のよいネクロプトーシス誘導の条件を探索し設定した.そして,野生株に比べ,耐性株においてネクロプトーシスによる細胞死誘導が多く生じることが明らかとなった.またネクロプトーシス誘導経路の構成蛋白であるRIPK3およびMLKLの発現が耐性株で亢進していることを確認した.RIPK3,MLKLの発現増加がネクロプトーシス誘導効率に関与している可能性を見出した.
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Strategy for Future Research Activity |
これまではシスプラチン耐性株においてネクロプトーシス誘導効果を評価したが,これに加え我々が樹立したペメトレキセド耐性株についても同様にネクロプトーシス誘導効果を評価し,ペメトレキセドの治療ターゲットであるthymidylate synthase(TS), glycinamide ribonucleotide formyltransferase(GARFT)発現との相関を調べる.シスプラチン耐性機構およびペメトレキセド耐性機構として知られる既知の蛋白群との発現とネクロプトーシス誘導効率の相関を調べる.
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