2017 Fiscal Year Research-status Report
特発性肺線維症・肺癌に共通する機能性RNA分子ネットワークの探索
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17K16052
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
上川路 和人 鹿児島大学, 附属病院, 医員 (80633396)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロRNA / 肺癌 / 肺線維症 / ノンコーディングRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
呼吸器疾患の臨床において、肺癌合併特発性肺線維症の予後は極めて不良であり、現在においても、本疾患の有効な治療法は存在しない。肺線維症の経過観察中に肺癌を発症する症例が、少なからず存在する事から、両疾患に共通する分子経路が存在する事が示唆される。肺線維症を合併した肺癌の治療は限定されており、早期発見、新規治療開発に繋がる両者の病態解明が望まれている。 我々は肺癌の癌抑制性マイクロRNAの中に細胞外マトリックスに関連する遺伝子群を制御するマイクロRNAがあることを明らかにした。さらにこれらの癌抑制性マイクロRNAは肺線維症においても発現が抑制されており、線維化から癌化への移行に関わる病態解明の糸口となりうるものと考えた。研究では、特発性肺線維症・肺癌臨床検体を用いて、マイクロRNAの発現解析及び疾患特異的に活性化している分子経路を検証した。また、マイクロRNA導入細胞の網羅的な発現解析、データベースの活用、臨床検体の発現情報を組み合わせる事で、マイクロRNAが制御する蛋白コード遺伝子、分子経路の探索を行った。 肺癌合併肺線維症の臨床検体において、miR-29の発現が抑制されていることを明らかにした。miR-29は癌抑制性マイクロRNAであり、細胞外マトリックス分子であるLOXL2やSERPINH2を抑制しており、肺癌、肺線維症の双方の病態において関連している可能性を見出した。 今後は肺癌における癌抑制性マイクロRNAと肺癌合併肺線維症におけるマイクロRNA発現プロファイルを元に、特発性肺線維症・肺癌に共通する機能性RNAを探索し、両者の病態に関わる分子経路を明らかにするべく研究を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
肺癌合併肺線維症の臨床検体の収集に難渋している。今後もより積極的な症例集積を行い、次世代シークエンサーを用いて、「全ゲノム・肺癌合併特発性肺線維症マイクロRNA発現プロファイル」を作成することを目標とする。
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Strategy for Future Research Activity |
肺癌合併肺線維症の組織検体による次世代シーケンサーによる解析から、これまで知られていないマイクロRNAが探索できる可能性が高い。肺癌、肺線維病変部位で発現変動するマイクロRNAについて、機能解析を施行して、「疾患抑制型マイクロRNA」「疾患促進型マイクロRNA」に機能分類する。 マイクロRNA発現プロファイルから、肺癌組織・肺線維症組織で発現の亢進・抑制が認められたマイクロRNAに着目し、これらマイクロRNAを順次細胞株に核酸導入して、細胞の増殖・遊走・浸潤・アポトーシス誘導能を指標とした機能解析を施行する。また、これらマイクロRNAの発現機構について、TGF-βによる刺激が影響しているか、検討を行う。 マイクロRNAを起点とした機能性RNAネットワークの探索から、本疾患に特異的な分子経路を見出す。本疾患に特異的な分子標的を見出し、in vitro/in vivoの解析から、治療戦略について検討する。 最近の研究から、ECMの異常な蓄積は線維化の促進のみならず、EMT(上皮間葉転移)や癌細胞の転移に重要な役割を担っている事が明らかとなってきており、本疾患の治療の標的である。そこで、機能性RNAネットワークの中から、ECM、コラーゲン合成経路、インテグリン・シグナルに着目し、研究を進める事とする。
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Causes of Carryover |
試薬、消耗品について他の研究と共通して使用していたため。 今後、機能解析を含めた試薬、消耗品の購入、解析のために使用する予定。
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