2017 Fiscal Year Research-status Report
免疫系と神経系のクロストークに着目した気管支喘息重篤化機構の解明と制御法開発
Project/Area Number |
17K16064
|
Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
芦野 滋 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (10507221)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 重症気管支喘息 / ウィルス感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
気管支喘息の重症化には様々な要因が考えられているが、その一つにウィルス感染が挙げられる。本研究課題では、ウィルス感染によって生じる気管支喘息の重症化メカニズムの解明および新規治療法開発の研究基盤の構築を目指す。平成29年度では、ウィルス感染が引き起こす重症気管支喘息のモデルマウスの作製を行った。本研究ではウィルス感染状態を構築するために、ウィルス構成成分の一種 double stranded RNA を模倣する人工試薬 poly I:Cを、一般的な気管支喘息モデルマウスの肺内に投与した。その結果、呼吸機能の指標である気道過敏性を測定したところ、通常の気管支喘息モデルマウスの気道過敏性に比べて、polyI:C を投与された重症喘息モデルマウスの気道過敏性が顕著に亢進し重症化することがわかった。また、気管支肺胞洗浄法により肺内の浸潤細胞を解析した結果、通常の喘息では好酸球浸潤が優位な気道炎症であったのに対し、polyI:C を投与した重症喘息モデルでは、好中球の浸潤を伴った気道炎症に変化することが明らかとなった。加えて、気管支肺胞洗浄液のサイトカインを測定したところ、重症喘息モデルではウィルス応答性免疫反応に関するサイトカインの産生増大が確認された。これらの特徴は、臨床研究で報告されている重症気管支喘息の所見に酷似しているため、ヒトの病態に反映できるモデルと考えている。さらに、重症気管支喘息モデルマウスと通常の気管支喘息モデルマウスの差異について解析を行ったところ、肺組織内の免疫細胞に発現する神経伝達物質の受容体が、重症気管支喘息モデルマウスの方で有意に増大していることが明らかになり、この受容体発現について更なる解析を遂行している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
気管支喘息を罹患している患者がウィルス感染を起こす状況を想定して、すでに気管支喘息が成立しているフェーズで、ウィルス構成成分を模倣するpoly I:Cを投与したところ、呼吸機能が低下し、肺における好中球浸潤が認められ、ヒトの病態を反映し得る重症気管支喘息モデルマウスを作製することができた。肺におけるサイトカイン産生についても変化が認められ、気管支喘息を悪化させる免疫反応が誘導されていると推察された。従って、気管支喘息重症化モデルマウスの構築は当初の計画通りに達成されたと考えている。また、肺組織内の免疫細胞に神経物質の受容体が発現する等の解析結果が得られたため、この現象が気管支喘息の重症化にどのように関わるか解析を進めていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
この重症気管支喘息モデルマウスを用いて、気管支喘息の重篤化メカニズムの解明と新規治療分子の探索を進める予定である。特に、肺組織内の免疫細胞が発現する神経伝達物質の受容体がどのような役割を果たすかに焦点を当て研究を遂行する。また、様々な抗ウィルス応答性サイトカインの産生が行われる肺組織内で、どのようなサイトカインに依存して気管支喘息の重症化が誘導されているかをノックアウトマウスや中和抗体等を用いて解析する予定である。さらに、肺組織内から各種免疫細胞を単離し、詳細な性状解析を行い、重症気管支喘息の発症メカニズムに関する分子機構についても追究する予定である。
|
Causes of Carryover |
短期間で重症気管支喘息モデルマウスの作製が達成されたため、当初の予想よりも低額で初年度を終えた。それに伴い、免疫細胞の性状解析で用いるフローサイトメトリー用の抗体や、サイトカイン測定に用いる試薬等も想定した使用量を下回った。また、当該施設の様々な共有機器が利用可能になったため、当初想定していた外部委託の解析費用も抑えられた。次年度は、気管支喘息の重症化メカニズムを解明するうえで、様々なタンパク質あるいは遺伝子解析用の試薬が必要である。さらに、前年度以上に、中和抗体の購入費やノックアウトマウス作製のための準備費用が必要となるため、それらの試薬代や諸経費に使用する予定である。
|