2018 Fiscal Year Research-status Report
免疫系と神経系のクロストークに着目した気管支喘息重篤化機構の解明と制御法開発
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17K16064
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
芦野 滋 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (10507221)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アレルギー・ぜんそく / ウィルス感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、ウィルス感染によって生じる気管支喘息の重症化メカニズムの解明および新規治療法開発の研究基盤の構築を目指している。平成30年度では、一般の気管支喘息患者がウィルス感染状態を有する状態を想定したモデルマウスを用いた実験を行い、ウィルス構成成分の一種 double stranded RNA を模倣する人工試薬 poly I:Cを、気管支喘息モデルマウスの肺内に投与した。その結果、呼吸機能の指標である気道過敏性が亢進し呼吸機能が悪化すること、また肺への好酸球浸潤に加えて、好中球の浸潤を伴った気道炎症が誘導されることが明らかとなった。さらに、気管支肺胞洗浄液には、気管支喘息を重症化させるサイトカイン (TSLP, IL-25, IL-33など) が高濃度に含まれることが確認された。 さらに、肺組織内の免疫細胞群の性質をフローサイトメトリーで解析すると、poly I:C投与によって喘息病態が悪化したマウスでは、樹状細胞やマクロファージの細胞表面上に神経ペプチド受容体NK2R が発現していることが明らかになった。このNK2R発現増強はT細胞やB細胞では弱く、樹状細胞やマクロファージに選択的な現象であることも確認された。 現在、このNK2Rが、poly I:Cによって引き起こされる重症喘息においてどのような役割を果たしているか、NK2Rのリガンドである neurokinin A、あるいは阻害剤などを用いて更なる検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウィルス構成成分を模倣するpoly I:Cを投与することによって、気管支喘息の病態が重症化される際に、肺におけるサイトカイン産生、特にTSLP、IL-25、IL-33といった、重症喘息患者で認められるサイトカイン群の産生増大が認められた。また、一方で、樹状細胞やマクロファージの細胞表面上に神経ペプチド受容体が発現する知見が得られた。今後、気管支喘息の重症化機構の一端を解明する上で、重要な解析結果と思われるため、計画通りに進行していると考えている。 上述したサイトカインの産生増大と、神経ペプチド受容体発現増大の関連性を、サイトカイン中和抗体および神経ペプチド阻害剤等を用いて、poly I:Cが誘導する気管支喘息重症化メカニズムを解析していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題で作製した気管支喘息重症化モデルでは、肺内におけるTSLP、IL-25、IL-33といったサイトカイン産生の増大と、樹状細胞やマクロファージの細胞表面上に発現する神経ペプチド受容体の発現亢進が特徴的である。そのため、神経ペプチド受容体が気管支喘息重症化にどのような役割を果たすかについて解析を継続する予定である。また、poly I:C投与後の神経ペプチド受容体発現の経時変化やサイトカイン依存性等を解析して、詳細な分子メカニズムについて精査していく予定である。
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Causes of Carryover |
平成30年度は、重症気管支喘息モデルマウスの作製技術や解析方法がすでに構築されていたということもあり、当初の予想よりも低額で終えることができた。新規のサイトカイン測定キットや新規の細胞表面マーカーを用いた解析も必要になってきたが、所属している研究室内の共有試薬を用いることによって、新たな試薬購入の機会が減ったことも大きく関係した。学内で共同利用できるフローサイトメトリー機器や組織染色を安価に委託できるサービスが充実したことも背景にあった。 次年度は、前述したメカニズム解析のために、サイトカイン中和抗体や阻害剤が随時必要になると考えられる。また、必要に応じて、ノックアウトマウス購入あるいは作製のための費用が必要となる。そのため、それらの試薬代やマウスの購入費に充当していきたいと考えている。
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