2019 Fiscal Year Research-status Report
免疫系と神経系のクロストークに着目した気管支喘息重篤化機構の解明と制御法開発
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17K16064
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
芦野 滋 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (10507221)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アレルギー・ぜんそく / ウィルス感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度では昨年度に引き続き、風邪症候群を引き起こすウィルスに感染した状態を想定した喘息モデルマウスを用いて研究を進めた。ウィルス核酸成分の一種 double stranded RNA (dsRNA) を模倣する人工試薬 poly I:Cを喘息マウスの肺内に投与し喘息病態が増悪することを明らかにした。一方で、別のウイルス核酸成分であるsingle stranded RNA (ssRNA)の人工試薬R848を投与したところ、喘息症状や気道炎症の増悪は認められなかった。このことから、ウイルス感染で喘息が悪化する際には、ウイルス核酸成分のうちssRNAではなくdsRNAが喘息重症化を誘導していることが示唆された。このとき、polyI:C投与によってTh2サイトカインであるIL-5やIL-13だけでなく、IL-6、IFN-γ、IL-12などのサイトカインレベルも肺内で上昇してサイトカインストームが起きていることが示唆された。 また、poly I:C投与によって喘息病態が悪化したマウスでは、樹状細胞やマクロファージの細胞表面上に神経ペプチド受容体NK2R の発現していることが明らかになっており、上述したサイトカイン中和抗体を投与して、喘息重症化の軽減およびNK2R発現性の樹状細胞やマクロファージの消失が認められるか検討したが、明らかなサイトカイン依存性を示すデータは未だ得られていない。現在、これらサイトカイン産生やNK2Rが、poly I:Cによって引き起こされる重症喘息においてどのような役割を果たしているか引き続き解析を行っている。加えて、昨年度にも確認したように、ヒトの重症喘息と同じように、喘息を重症化させるTSLP, IL-25, IL-33の肺内産生量がpolyI:C投与した喘息マウスで上昇するため、これらのサイトカインの関与の有無についても検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウイルス核酸成分のうち、ssRNAではなくdsRNAが喘息重症化の原因である可能性が推察された。また、肺におけるサイトカインストームも確認され、樹状細胞やマクロファージの細胞表面上に神経ペプチド受容体が発現する知見も得られている。喘息重症化のサイトカイン依存性を解析中であるが、今後、TSLP、IL-25、IL-33といった重症喘息患者でも認められるサイトカイン群にも焦点を当てて研究を予定通り展開していく。 サイトカインストームが神経ペプチド受容体発現増大、および喘息症状を引き起こす機序を、サイトカイン中和抗体や各種阻害剤等を用いて、poly I:Cが誘導する重症喘息の詳細なメカニズムを解明していく予定である。 以上のように研究進捗はおおむね順調と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題のpolyI:Cを用いた重症喘息モデルにおいて、肺内における各種サイトカイン肺内レベル増大と、樹状細胞やマクロファージに発現する神経ペプチド受容体の発現亢進が特徴的であるため、引き続きこれらのサイトカイン依存性を解析していく。また、実際のウイルス感染誘導性の喘息重症化モデルを別途開発しており、ssRNAやdsRNA依存性を遺伝子改変マウス、およびサイトカイン依存性について各種中和抗体を用いて、検討を続けていく予定である。
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Causes of Carryover |
令和元年度は、重症喘息モデルマウスの病態解析ツール(中和抗体やフローサイトメトリー抗体など)が昨年度までに購入していたこともあり、当初の予想よりも低額で終えることができた。加えて、学内の共同研究機器の充実化や、気道過敏性測定装置(flexiVent)の維持に係る経年劣化に応じて購入する部品などの費用軽減も関係した。さらに、実験試薬の保存方法の改善、再利用などのコスト削減試行も成功した事情もあった。 令和2年度は遺伝子改変マウスの維持費、ウイルス増幅・精製・力価測定にかかる試薬代、共同利用機器費の利用料が増額される見込みであるため、それらの研究経費にも充当する予定である。
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