2017 Fiscal Year Research-status Report
高齢者腎臓病の予後不良因子、三次リンパ組織を検出する新規バイオマーカーの開発
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17K16081
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 有紀 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (60762086)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 急性腎障害 / 老化 / 三次リンパ組織 / 慢性炎症 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は高齢者腎臓病の予後不良因子、三次リンパ組織を検出するバイオマーカーを同定することである。マウスの解析では三次リンパ組織形成に伴い変動する分子群を同定する目的でSham operationと急性腎障害モデルである虚血再灌流障害をそれぞれ施した若齢・高齢マウスの腎臓の合計4群間でGene Chipを用いて遺伝子発現の網羅的解析を行い、若齢でも高齢でも障害に応じて上昇する遺伝子、高齢マウスにおいて障害で上昇する遺伝子を同定した。さらに両群間でオーバーラップする遺伝子を対象としてパスウェイ解析を施行し、分泌因子関連の遺伝子を同定した。これらの腎三次リンパ組織を含む腎臓に加えて脾臓およびリンパ節のcDNAパネルを作成し、上記分子の発現解析を行い腎臓で特異的に発現している候補分子の絞り込みを行った。 ヒトので解析ではマウスで同定した候補分子の染色を行ったことに加えて、ヒト腎臓三次リンパ組織の多様性を解析する目的でヒト複雑性腎盂腎炎のサンプルを入手・解析を行った(ドイツ・アーヘン工科大学との国際共同研究)。複雑性腎盂腎炎は腎三次リンパ組織の強力な誘導因子であること、複雑性腎盂腎炎で誘導される三次リンパ組織の構成分子および細胞は加齢に伴い誘導される三次リンパ組織と同等であることを見出し、ヒトにおける三次リンパ組織形成は基礎疾患の種類を問わず同じ分子および細胞を用いて多段階的に誘導されることを見出した。このことは本研究課題で探索しているバイオマーカーが三次リンパ組織を誘導する様々な慢性腎臓病に対し適応可能である可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題については計画した通りに実験を遂行した。テーマ2においては当初計画していた京都大学の高齢者腎臓のヒト腎臓サンプルは三次リンパ組織の数が限られており、より詳細な検討を行うためにはより三次リンパ組織が多く含まれるヒト腎臓サンプルでの解析が必要と考えられたため、ドイツ・アーヘン工科大学との国際共同研究を開始しヒト複雑性腎盂腎炎の解析に着手した。これまでヒトの複雑性腎盂腎炎の三次リンパ組織の既報は存在しなかったが、我々は初めてヒト複雑性腎盂腎炎が腎臓における三次リンパ組織の強力な誘導因子であることを見出した(現在までの進捗状況参照)。その他にもヒト複雑性腎盂腎炎では多彩な成熟段階の三次リンパ組織が共存しており、現在それらの臨床的意義に関する解析を進めており新規知見が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスでは継続して候補分子の探索を行うとともに得られた候補分子のELISAでの解析を血清で行い、ヒトでの解析では引き続きヒト三次リンパ組織の多様性とその臨床的意義の解析を行う。これらの解析から得られた候補分子でパネルを作成した後にヒトサンプルを用いた解析に着手する方針とする。
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Causes of Carryover |
高齢マウスの調達の制限があり一部サンプルの制限ができてしまったために解析できなかったものがあり、次年度には高齢マウス注文を増やし、対応する方針とした。
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