2017 Fiscal Year Research-status Report
尿細管MR機能との比較を通じた腸管MRの血圧代謝関連病態における新たな意義の解明
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17K16095
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中村 俊文 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (10594583)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ミネラルコルチコイド受容体(MR) / 高血圧 / 食塩感受性 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで我々の研究室では、心臓・腎臓などの臓器障害やひいては生命予後にも深く関与することが知られる核内受容体の1つであるMR(mineralocorticoid receptor)について、その活性化機構や相互作用因子、さらには腸管上皮における機能の解析をin vitroおよびin vivoの系を用いて進めてきた。直近では腸管上皮特異的MR欠損マウス(Villin MR-KO)を用いた研究により、腸管上皮MRが生体のNa恒常性に深く関与していること、塩分過剰とMR活性亢進下の血圧上昇に寄与することを示したが、本研究ではこれまでの研究手法も用いながら腎尿細管におけるMRと腸管上皮MRの比較解析を行っている。まず我々は、MR floxマウスおよび尿細管特異的Cre発現マウスであるKSP-Creマウスを用いて腎尿細管特異的MR欠損マウス(KSP MR-KO)を作成し、表現型解析として体重、摂餌量、尿中・便中排泄電解質を測定した。ControlとKSP MR-KOマウスの比較において、摂餌量と体重推移には差を認めなかった一方で、KSP MR-KOマウスではControl群に比べ尿中Na排泄量が約30%多く、便中Na量は約50%抑制されていた。予想していたように、KSP MR-KOマウスではMR欠損によるNa再吸収障害を腸管Na吸収を活性化させることで代償していると考えられた。この現象はVillin MR-KOマウスと対になるものであった。また、上記KSP MR-KOの作成に時間を要したため、Villin MR-KO, Controlマウスへの高脂肪食負荷を平成29年度中に前倒して開始している。現在開始後6週程度で両マウス間での差異は見られていないが、代謝性障害に伴う表現型の出現には長期の負荷を要すると考えられるため、計画通り14週間負荷の経過を引き続き評価・解析していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
尿細管特異的MR欠損マウスの作出に時間を要したため、平成30年度に実施予定であった高脂肪食負荷を前倒しで開始している。その後尿細管特異的MR欠損マウスの作出が完了し、上記のように表現型解析を進めることができている。現時点での解析結果は我々のこれまでの腸管上皮特異的MR欠損マウスを用いた解析と整合性があり当初想定したものと合致していることから、研究計画はやや遅れているものの今後予定する実験計画を遂行できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずはKSP MR-KOで見られた尿中・便中排泄電解質の変化の機序を評価するべく、腎・腸管におけるMR標的遺伝子である上皮性Naチャネル(ENaC)ファミリーやSGK1、さらに他のNaチャネルの発現量解析をRNA,蛋白レベルで確認する。Villin MR-KOでは腸管上皮でのENaC発現低下が便中Na排泄増加の原因となっていたことからも、KSP MR-KOでは尿細管でのENaC発現低下が予想される。これらVillin MR-KO, KSP MR-KOマウスの通常食下での機能解析が終了した後、既に負荷を開始している高脂肪食負荷群に加え、DOCA錠埋込+1%NaCl飲水負荷、高脂肪食+1%NaCl飲水負荷の群を作成し、各負荷における血圧・Na動態の変化だけでなく、免疫染色を含めた病理学的評価と各種遺伝子発現変動のマイクロアレイ法およびリアルタイムPCR 法を用いた評価を行うことで、高血圧・臓器障害・食塩感受性における腸管上皮・尿細管MR 機能の臓器特異性について解析したいと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究は、当教室の研究の流れの中で行っている研究であり、H29年度の前半は、効率的に研究資金を運用することができたため、次年度に余剰金を回すことに成功した。上述のとおり上記モデルマウスの作成に時間を要したこともありH30年度に行う表現型解析の配分が増し、同年度はより多くの研究資金が必要となることが予想されるため、資金使用計画としては合理的な配分で行うことができたと考えている。
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[Journal Article] Intestinal Mineralocorticoid Receptor Contributes to ENaC-Mediated Intestinal Sodium Absorption and Blood Pressure Regulation2018
Author(s)
Toshifumi Nakamura, Isao Kurihara, Sakiko Kobayashi, Kenichi Yokota, Ayano Murai-Takeda, Yuko Mitsuishi, Mitsuha Morisaki, Nao Kohata, Yosuke Oshima, Yukiko Minami, Hirotaka Shibata, Hiroshi Itoh
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Journal Title
Journal of the American Heart Association
Volume: 13
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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