2017 Fiscal Year Research-status Report
マクロファージのAktによる環境-免疫-代謝連関の解明と新規糖尿病治療の開発
Project/Area Number |
17K16141
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
戸田 郷太郎 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (30780332)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 食後糖代謝調節 / 免疫 / 発現調節 / インスリン / サイトカイン / LPS |
Outline of Annual Research Achievements |
マクロファージ特異的Akt欠損マウス(LysMDKOマウス)では随時血糖が高く、摂食による肝臓糖新生関連酵素の発現抑制がコントロールと比較し弱くなっているという過去の検討から、マクロファージのAktを介した経路が血糖値の上昇を抑制する可能性を考え、食後分泌されるインスリン、および食後血中濃度が上昇するLPSによりマクロファージのAkt・mTOR経路を活性化することにより誘導されるIL-10に注目し検討を行った。今回の研究で食後に肝臓に至る門脈血のIL-10濃度が上昇するが、この濃度上昇はLysMDKOマウスや肥満マウスでは見られず、IL-10が代謝調節において重要である可能性が考えられた。IL-10で初代培養肝細胞を刺激すると、インスリンと協働して糖新生関連酵素の発現が抑制され、さらに肝臓でのIL-10受容体発現をshRNAを用いて抑制すると、LysMDKOマウスと同様に摂食時の糖新生抑制が障害されたことから、摂食時の生体内の変化によるマクロファージのIL-10産生が糖代謝調節に重要であると考えられた。また、mTORが活性化された状態になりIL-10産生が増加するマクロファージ特異的Akt1/Akt2/TSC2ノックアウトマウスでは摂食時の糖新生抑制がコントロールマウスと同様にみられたことから、Akt-mTOR経路がマクロファージによる摂食後の糖新生抑制に重要であると考えられた。さらに、LPSの受容体であるTLR4の機能が低下したマウスから骨髄移植を受けたマウスで食後糖新生の抑制が弱くなることから、これまで炎症や高血糖を惹起すると考えられてきたTLR4の経路が食後血糖上昇の抑制に重要であることが分かり、IL-10が肥満糖尿病の新たな治療のツールとなる可能性のみならず、免疫が摂食など環境への暴露にいかに反応するかが代謝に重要であることが分かり、今後の検討課題となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画の結果は概ね判明しており、今後論文発表を通じて公表する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
①肥満モデルでのマクロファージのAktシグナルの変化、その変化に関わる因子の解明を目指す。 ②マクロファージのAktを介したIL-10分泌経路を肥満糖尿病の治療に応用する可能性について検討を開始するため、IL-10による肝臓での代謝調節機構の解明を目指す。 ③肥満状態が免疫の環境への反応性をどのように変化させるかを検討するため、肥満モデルでの免疫細胞の遺伝子発現変化の解明を目指す。
|
Research Products
(2 results)