2017 Fiscal Year Research-status Report
モデル動物を用いた骨格筋におけるインスリンシグナルの役割の解明
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17K16142
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
相原 允一 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (60779362)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 骨格筋 / IRS-1 / IRS-2 / インスリンシグナル / IGF-1 / 運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
●骨格筋の糖代謝に対する役割:骨格筋特異的IRS-1欠損マウス(MIRS1KO)と骨格筋特異的IRS-2欠損マウス(MIRS2KO)では、インスリン負荷試験・経口ブドウ糖負荷試験では表現型を認めなかったが、骨格筋特異的IRS1/2ダブル欠損マウス(MIRS1/2DKO)ではインスリン感受性には異常を認めなかったものの、経口ブドウ糖負荷試験では空腹時血糖値および負荷後15分の血中インスリン値が有意に低下を認めた。以上の結果より、インスリン依存性の血糖低下作用には差を認めないが、インスリン非依存的な骨格筋のブドウ糖取り込みが亢進しているではないかと考えた。 ●骨格筋の成長に対する役割:MIRS1/2DKOの体重を経時的に測定したところ、7週齢から78週齢までは有意に体重の減少を認めたが、79週齢以降はコントロールマウスの体重が低下傾向とり、体重の有意な減少は消失した。MIRS1/2DKOの各組織の重量を解剖およびCTで検討したところ、MIRS1/2DKOの体重減少は骨格筋重量の減少によると考えられた。また、体長についてはMIRS1/2DKOで短縮を認めた。 ●以上の結果よりMIRS1/2DKOではインスリン受容体シグナルのみならずIGF-1受容体シグナルの障害が主たる表現型を説明するものと考えた。そこでマウスの腹腔内にIGF-1の投与を行い血糖値の推移をインスリン負荷試験同様に観察したところ、MIRS1/2DKOでは有意なIGF-1抵抗性を示した。その分子メカニズムを解明するため、マウスの下大静脈よりIGF-1を投与し、骨格筋におけるインスリンシグナル関連分子の変化をウエスタンブロット法で検討を行ったところ、IGF-1投与後のAktのリン酸化はほぼ消失していた。これらの結果よりMIRS1/2DKOの骨格筋減少はIGF-1受容体シグナルの障害が主たる原因であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨格筋の糖代謝と成長に関する解析はおおむね順調に進んでいるが、運動時の骨格筋におけるIRS-2の役割についてはやや解析が遅れている。その理由として、各マウスの運動耐用能により同一条件の運動条件では運動負荷の度合いが異なり、血糖値の低下やIRS-2の発現上昇の程度にばらつきが大きいためである。今後は研究目的に合致した運動プロトコールの条件検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
●骨格筋の糖代謝・成長に対する役割については、主にIGF-1受容体シグナルが障害されていることが示唆されたが、ウエスタンブロット法ではAktのリン酸化までしか確認できていないため、当初の予定通りGSK3β, AS160, TBC1D1といった下流分子のリン酸化の検討、骨格筋へのブドウ糖取り込み量の測定を進めていくとともに、骨格筋の成長障害という観点から、mTor, S6Kといった分子についても検討を行っていく方針である。また、平行して骨格筋の成長障害について組織学的評価も行っていく方針である。 ●運動時の骨格筋における役割に関しては、本研究目的に合致した運動プロトコールの条件検討を行い、運動中の呼吸代謝測定および運動前後の血糖値の変化を測定する予定である。
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Research Products
(2 results)