2017 Fiscal Year Research-status Report
チアゾリジン誘導体による脂肪肝改善メカニズムの解明
Project/Area Number |
17K16154
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
海老原 千尋 自治医科大学, 医学部, 助教 (90790915)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脂肪肝 / PPARγ / ラット / チアゾリジン誘導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
非アルコール性脂肪肝の臨床的重要性が増しているが、現在確立した薬物療法は存在しない。近年PPARγアゴニストであるチアゾリジン誘導体が脂肪肝を改善することが報告されているが、その改善メカニズムは不明である。チアゾリジン誘導体がマウスでは脂肪肝を悪化させるのに対しラットでは改善作用を示すことから、レプチン欠損マウスであるob/obマウスおよび全身性脂肪萎縮症モデルマウスであるA-ZIP/F-1マウスと我々が開発したレプチン欠損Lepmkyo/Lepmkyoラットおよび全身性脂肪萎縮症モデルSKOラットにおいて肝臓におけるPPARγ遺伝子発現を検討したところ、ob/obマウスおよびA-ZIP/F-1マウスでは肝臓におけるPPARγの遺伝子発現が著名に亢進しているのに対し、Lepmkyo/LepmkyoラットおよびSKOラットでは、ob/obマウスやA-ZIP/F-1マウスと同様に著名な脂肪肝を認めるにもかかわらず、PPARγ遺伝子の発現亢進は認められなかった。そこでob/obマウス、A-ZIP/F-1マウスおよびLepmkyo/Lepmkyoラット、SKOラットを対象にチアゾリジン誘導体であるPioglitazoneおよびRosiglitazoneの投与実験を行った。その結果、チアゾリジン誘導体はob/obマウス、A-ZIP/F-1マウスの脂肪肝を増悪させるのに対し、Lepmkyo/Lepmkyoラットでは脂肪肝の改善が認められた、また驚くべきことに、SKOラットではチアゾリジン誘導体による肝臓脂質含量の変化は認められなかった。このとき肝臓におけるPPARγ遺伝子の発現はob/obマウス、A-ZIP/F-1マウスでさらなる亢進が認められたが、Lepmkyo/Lepmkyoラット、SKOラットでは変化を認めなかった。チアゾリジン誘導体に対するマウスとラットでの反応性の違いは肝臓におけるPPARγ遺伝子発現の違いが原因であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究実施計画にある通り、レプチン欠損ob/obマウス、全身性脂肪萎縮症モデルA-ZIP/F-1マウス、レプチン欠損Lepmkyo/Lepmkyoラット、全身性脂肪萎縮症モデルSKOラットを対象にチアゾリジン誘導体であるPioglitazoneおよびRosiglitazoneの投与実験を行い、チアゾリジン誘導体はob/obマウス、A-ZIP/F-1マウスの脂肪肝を増悪させるのに対し、Lepmkyo/Lepmkyoラットでは脂肪肝を改善し、SKOラットでは肝臓における中性脂肪含量を変化させないことを明らかにした。このマウスとラットにおけるチアゾリジン誘導体に対する反応性の違いは、肝臓におけるPPARγ遺伝子発現の違いによるものと考えられた。一方、Lepmkyo/LepmkyoラットとSKOラットのチアゾリジン誘導体に対する反応性の違いに関するメカニズムについては、Lepmkyo/Lepmkyoラットは肥満モデル、SKOラットは脂肪萎縮症モデルであることから脂肪組織の有無がこの違いを生み出している可能性が考えられる。今後、Lepmkyo/LepmkyoラットとSKOラットのチアゾリジン誘導体に対する各臓器の反応性を検討することによりチアゾリジン誘導体の脂肪肝改善メカニズムが明らかになることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトにおいてチアゾリジン誘導体の糖代謝改善作用における主な作用部位は脂肪組織であると考えられているが、マウスにおいては肝臓や骨格筋における作用も報告されている。そこで、チアゾリジン誘導体の脂肪肝および糖代謝改善作用における脂肪組織の意義を明らかにする目的で、肥満モデルであるob/obマウス、Lepmkyo/Lepmkyoラットと全身性脂肪萎縮症モデルであるA-ZIP/F-1マウス、SKOラットを対象にチアゾリジン誘導体投与実験を行う。この時、脂肪組織、骨格筋、肝臓におけるPPARγおよびPPARγ標的遺伝子(Fsp27、Adipoq、 Cd36、Fabp4、 Plin1など)の発現や脂質含量などを検討する。Lepmkyo/LepmkyoラットとSKOラットのチアゾリジン誘導体に対する各臓器の反応性を検討することによりチアゾリジン誘導体の脂肪肝改善メカニズムが明らかになることが期待される。
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Causes of Carryover |
チアゾリジン誘導体の脂肪肝および糖代謝改善作用における脂肪組織の意義を明らかにする目的で、肥満モデルであるob/obマウス、Lepmkyo/Lepmkyoラットと全身性脂肪萎縮症モデルであるA-ZIP/F-1マウス、SKOラットを対象にチアゾリジン誘導体投与実験を行う。この時、脂肪組織、骨格筋、肝臓におけるPPARγおよびPPARγ標的遺伝子(Fsp27、Adipoq、 Cd36、Fabp4、 Plin1など)の発現や脂質含量などを検討する。
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