2017 Fiscal Year Research-status Report
転写因子の動態解析に基づくアルドステロン合成酵素のエピゲノム制御機構の解明
Project/Area Number |
17K16166
|
Research Institution | Department of Clinical Research, National Hospital Organization Kure Medical Center |
Principal Investigator |
吉井 陽子 独立行政法人国立病院機構(呉医療センター臨床研究部), その他部局等, その他 (00795320)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | アルドステロン合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまでアルドステロン合成制御の新規標的因子探索のため、アルドステロン合成を制御するDNAメチル化に焦点を当てたエピジェネティック調節機構の解明を行ってきた。アルドステロン合成の律速酵素であるCYP11B2のmRNA発現とDNAメチル化が逆相関し、さらにCYP11B2プロモーター領域のDNAメチル化部位に結合する複数の転写因子候補を同定してきた。また、これまでの研究においてアルドステロン合成にカルシウムシグナルの活性化が関与することが知られている。以上より、アルドステロン合成におけるエピジェネティック調節機構を受け、なおかつカルシウムシグナル活性化に関与する因子を探索するため、非機能性副腎皮質腺腫 (NFA)、アルドステロン産生腺腫 (APA)、ヒト副腎皮質癌細胞株 (HAC15)にアルドステロン過剰産生を示す遺伝子変異を導入し樹立したアルドステロン産生腺腫のモデル細胞株においてビーズアレイを用いた網羅的なDNAメチル化解析を行った。また、各種条件での刺激 (アンギオテンシンII,カリウム,cAMP) を与えたHAC15を上記サンプルに追加し、マイクロアレイ解析を行った。さらに既存の Bioinformaticsデータベース及びRNA-seqによる臓器・組織別遺伝子発現解析データベースなどを活用し統合解析を行うことで、アルドステロン合成に最も関わる363のカルシウム関連因子より標的因子Xを選抜した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画では、1. ルシフェラーゼアッセイによるCYP11B2プロモーターと転写因子の結合解析、 2. Chip-Seq解析による転写因子結合部位の網羅的探索とChip-qPCRによるCYP11B2プロモーター結合の定量解析、 3. In vitroで同定した転写因子の過剰発現・ノックダウンによるアルドステロン合成能評価、を予定した。しかし上述の充分なサンプル数を用いた統合解析を行うことによって、エピジェネティックな調節を受け、かつカルシウムシグナル活性化を介したアルドステロン合成に、当初検討していた候補転写因子以上に役割があると考えられる標的因子Xを発見した。そのため当初の予定を変更し、現在はAPA、NFA、ヒトまたはラット副腎皮質球状帯組織における標的因子Xの発現解析をqPCR、in situ ハイブリダイゼーション、ウエスタンブロッティング、及び免疫組織化学染色を用いて検討中である。実際に、APAではNFAと比較して標的因子XのmRNA発現がqPCRにおいても有意に亢進していることを確認している。さらに、今後はAPAにおけるCYP11B2との関連や、さらには標的因子の遺伝子操作によるin vitro、in vivoの解析について予定している。以上より、当初の予定とは異なるものの、より有望な新規治療標的を発見していることより、おおむね順調に進展しているものと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. In vitroでの標的因子操作による機能解析 HAC15における標的因子Xがステロイド合成酵素やアルドステロン合成に与える影響を、遺伝子操作の上、拮抗薬や阻害薬を用いて検討する。 2. 標的因子Xのコンディショナルノックアウトマウスやアルドステロン過剰症ラットにおける標的因子阻害による表現型の観察 他の研究課題で作製予定の副腎皮質球状帯特異的に発現するCYP11B2またはDAB2のプロモーター下にCreを発現するマウスを利用する。標的因子floxマウスは他の研究室に有れば譲り受け、無ければ別の予算を用いて作製を検討する。両者のマウスを交配し、副腎皮質球状帯特異的ノックアウトモデルを作製する。低ナトリウム食で飼育したSplague-Dawley ratは、レニン・アンギオテンシンII依存性の高アルドステロン血症を示す。また、Splague-Dawley ratに腎動脈狭窄を人工的に作成、あるいはアルドステロン持続注入したラットに対し、高ナトリウム食を負荷することで、レニン・アンギオテンシンII依存性高アルドステロン血症を呈する高血圧発症ラットを作成することができる。標的因子に関わる化学物質の投与などを行い表現型に与える影響を検討する。作製した動物モデルの血圧、アルドステロン濃度を測定する。摘出した副腎組織におけるCYP11B2発現やアルドステロン合成を免疫組織化学により評価する。また、副腎皮質球状帯をDAB2抗体で染色することにより、新規に同定した因子やシグナル伝達が副腎皮質球状帯の成長に与える影響も検証する。
|
Research Products
(3 results)