2017 Fiscal Year Research-status Report
癌幹細胞の可塑性をターゲットにした甲状腺癌の新規治療法の開発
Project/Area Number |
17K16167
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
嶋村 美加 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (90736406)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 甲状腺癌 / 癌幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌組織におけるCSC(cancer stem cells)の存在が指摘されて久しい。CSCは癌細胞のうち少数の細胞集団で、癌の発生や転移・治療抵抗性等に大きく関わっていると考えられている。本研究では、CSCの機能的なマーカーとしてレドックス調節機構、主にROS(活性酸素)に着目している。 先行の実験より、甲状腺癌細胞には少数のROSlow分画細胞が存在し、ROSlow分画はROShigh分画に比較すると、スフィア形成能が優位に高いことを見出した。これらの結果は甲状腺癌において、細胞内ROSレベル、すなわちレドックス調節機構がCSC機能を調節していることを示唆しており、ROSlow分画にCSCが濃縮されている可能性が考えられた。また同時に他の癌の典型的なCSCとは異なりROSlow細胞には可塑性があり、それぞれの分画をダイナミックに動くこともわかった。 今回、(1)強制的なROSレベルの増減によるスフィア形成能の変化の比較を行った。ROS低下には抗酸化剤:NAC、ROS増加にはグルタチオン生合成阻害剤:BSOを用いて検討した。NAC添加群ではスフィア形成に変化がなかったものの、BSO群ではスフィア形成が優位に減少した。スフィア形成にはやはりROSの産生量が大きく関わってることが示唆されROSを低く保つ機序を解明することは重要であると考えられた。そのため、(2)ROSlow/high分画細胞間の性質の違いを細胞内GSHの量と好気的呼吸と嫌気的解糖系間のバランスの違いで検討することとした。その結果、細胞内GSH量はROSlow分画の方が、ROShigh分画よりも優位に高いことがわかった。このことからROSを低く保つ一つの機序として、ミトコンドリアの酸化的リン酸化減少およびGSH上昇が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)ROSlow/high分画細胞のCSC形質を比較し、ROSが癌幹細胞の幹細胞様性質の維持に重要な役割を果たしていることを証明できたので、概ね順調に進んでいると言える。 (2)の細胞内ROSレベルを調節する因子の発現に関しては、 ROS low/high分画細胞の好気的呼吸と嫌気的呼吸のバランスの違いをOCR/ECARで比較検討まではできているが、当初予定していた項目すべてには至っていない。レドックス関連遺伝子発現検討はすでに終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
(2)の細胞内ROSレベルを調節する因子の発現に関しては、 ROS low/high分画細胞の好気的呼吸と嫌気的呼吸のバランスの違いを当初予定していた項目すべてには至っていないため、それらの項目を検討していく。 29年度の甲状腺癌細胞のCSCとしてのROSlow分画細胞の特性解析とROSレベルを規定する因子に関する実験結果を受けて、可塑性を生じさせる細胞シグナルの同定へ進む。我々はすでにいくつかのシグナル経路阻害剤でスフィア形成が抑制されるという結果を得ている。これを他のシグナル経路阻害剤にも広げて甲状腺CSC形成維持に関与するシグナル経路をさらに同定し、これぞれがROSのレベルにどのような影響を及ぼすかを検討する。また、同定されたシグナル経路同士の関係性も調べていく予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 当初の実験計画に対して進歩に多少遅れが生じており、計画では使用予定であった試薬等の購入が一部出されなかったために次年度使用額が生じた。 (使用計画) 平成29年度の研究計画で実行できなかった項目で使用を予定している消耗品の購入に使用する。
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Research Products
(3 results)