2017 Fiscal Year Research-status Report
エストロゲン応答性ミトコンドリア超複合体形成因子による糖・脂質・骨制御機構の解明
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17K16170
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
柴 祥子 埼玉医科大学, 医学部, 研究員 (70633824)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エストロゲン応答遺伝子 / 糖代謝 / 脂質代謝 / COX7RP / ミトコンドリア / 呼吸鎖複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ステロイドホルモンをはじめとする内分泌系は、生命活動や生体恒常性に重要である。近年、食の欧米化、身体活動量の低下によるエネルギー収支バランスの崩れに併せて内分泌作用の破綻が重なり、肥満、糖尿病、脂質代謝異常、高血圧、動脈硬化の発症を増加させると考えられており、こうした代謝異常は加齢に伴って増加しやすい。加えて、加齢に伴って骨粗鬆症を罹患する割合が増加し、この発症の主原因として男女ともに血中エストロゲン量の低下によることが示唆されている。このように女性ホルモンであるエストロゲンは様々な代謝系の調節に関与しているが、詳細な分子機構は明らかではない。我々は、エストロゲン応答遺伝子COX7RPがミトコンドリア呼吸鎖超複合体の制御因子であることを世界で初めて解明しており、エストロゲンと代謝系とを結ぶ鍵分子として注目されている。本研究では糖、脂質、骨代謝を対象として独自に作製したCOX7RP遺伝子改変マウスとその組織・培養細胞を用いて糖負荷・インスリン負荷試験、高脂肪食下等における表現型を明らかにし、ミトコンドリア呼吸鎖超複合体の分子制御を明らかにすることを目的とする。本年度は、Cox7rpノックアウトマウスの糖代謝における表現型を調べた。若齢・成年期において糖負荷・インスリン負荷試験を行った結果、Cox7rpノックアウトマウスの血糖値は低値を示した。その原因として、Cox7rpノックアウトマウスはピルビン酸負荷試験において血糖値が低値であることを明らかにし、糖新生の能力が低下していることが示された。また、Cox7rpノックアウトマウスの肝臓において、ミトコンドリア呼吸鎖複合体の形成が低下していること、ならびにATP産生が低下していることを見出した。これらのことより、COX7RPは肝臓ミトコンドリアの超複合体形成の促進とエネルギー産生を亢進させ、糖新生に重要な役割を担っていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Cox7rpノックアウトマウスを用いて、体重や各臓器の重量、ならびに糖代謝に関する表現型を明らかにした。また、Cox7rpノックアウトマウスの肝臓において、ミトコンドリアのエネルギー産生能における機能を明らかにし、さらに、呼吸鎖超複合体の形成が低下していることを見出した。 これらのことより、COX7RPは肝臓ミトコンドリアの超複合体形成の促進とエネルギー産生を亢進させ、糖新生に重要な役割を担っていることを解明した。 これらの成果は、Scientific Reports誌に論文として発表した。一方、COX7RP過剰発現トランスジェニックマウスにおいても同様に解析を進めており、おおむね順調に研究が進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の解析を引き続き行い、COX7RP過剰発現トランスジェニックマウスにおける糖代謝、脂質代謝に関する解析を行い、ミトコンドリア呼吸鎖超複合体の分子制御を明らかにする。このため、若齢・成年期において糖負荷・インスリン負荷・ピルビン酸負荷試験を行い表現型を解析する。これらの糖・脂質代謝における変化と合わせて、骨格筋、心臓、肝臓、脂肪組織などの組織における糖取り込み、インスリン感受性、糖新生経路を司る酵素群の遺伝子発現量をマイクロアレイなどを用いて解析を行う。ミトコンドリアのエネルギー産生能におけるCOX7RP過剰発現の影響を明らかにするため、ATP産生量の測定や呼吸鎖超複合体形成を解析する。これらの解析から、COX7RP による各種代謝制御機構とミトコンドリア呼吸鎖超複合体形成との関連を分子レベルで解明することにより、生活習慣病、骨粗鬆症、ロコモティブ症候群などの病因解明と新たな予防法や治療への展望を図る。
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Causes of Carryover |
COX7RP遺伝子改変マウスを用いたミトコンドリア分画の調製とBN-PAGEを用いた分析条件を改良することにより、効率よくミトコンドリア超複合体の解析が行えるようになり、ミトコンドリア機能評価のための必要な器具や試薬、キット、チューブ、ピペットなどの消耗品が減少した。次年度は、解析対象とする臓器に新たに心臓も加えてミトコンドリア呼吸鎖超複合体の解析を行うことにより、COX7RPの臓器・細胞に特異的な機能に関して、より多くの組織を対象として明らかにする。さらに、ミトコンドリア呼吸鎖超複合体の機能評価として活性酸素(ROS)産生量の測定系を新規に構築し、エネルギー代謝とは異なる別の側面からの糖・脂質代謝における超複合体の機能も解析することにより、最終年度(次年度)内に全て使用する。
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Research Products
(2 results)