2017 Fiscal Year Research-status Report
ホルモン感受性腫瘍におけるエストロゲン受容体変異体の発現プロファイルの同定
Project/Area Number |
17K16171
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
服部 裕次郎 日本医科大学, 医学部, 助教 (40528436)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エストロゲン受容体 / 下垂体腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに申請者らは、恒常的活性化能をもつ新規ヒトエストロゲン受容体(ER)α変異体を多数発見した。これら変異体は恒常的活性化能とともにERアンタゴニスト耐性を有するため、ホルモン感受性腫瘍におけるホルモン非依存的増悪と薬剤耐性獲得に関与することが示唆される。しかし、それら腫瘍における発現・機能解析は未解決であり、本研究では分子生物学的手法を用いその解明を行うとともに、病態組織におけるERα変異体発現の定量系を確立し、ホルモン感受性腫瘍の発現プロファイルの同定を目的とする。本研究では、日本医科大学付属病院の手術で得られた下垂体腫瘍を用いて実施することとした。なお、手術前に、手術検体の一部を医学研究に用いる場合があることを文書・口頭にて原則全患者に説明しており、同意書は文書で取得している。また、本学倫理委員会に必要な手続きを取り、十分な法的、倫理規定に則った。 下垂体腫瘍の手術検体からtotal RNAを抽出し、逆転写反応を行いcDNAを合成しデジタルPCR法を用いて遺伝子発現量を定量した。平成29年度は、まずその定量系の確立に主眼を置いた。すなわち、使用する手術検体の量の検討および遺伝子抽出の手法(どの試薬を用いるか等)、逆転写反応の条件設定、デジタルPCRの条件(使用するcDNAの量、プライマーの設計、コントロール遺伝子の選定、温度およびサイクル数の設定)、等の検討を行った。おおむねERα変異体発現の定量系の確立はできたものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は下垂体腫瘍の摘出~ERα変異体発現の定量系の確立までを主な目標としており、それはおおむねできたものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度計画で確立した定量系を用いて、①複数の種類の腫瘍検体を用いて、腫瘍によるERα変異体の発現量を比較する。②同じ種類の腫瘍のうち、悪性度の異なるステージの検体を採取し、ERα変異体と腫瘍悪性度の関連を調べる。 ホルモン感受性腫瘍の手術検体でしばしばERα抗体を用いて免疫染色が行われているが、これは全長型ERαを想定している。しかし、申請者らの先行研究(Mol Cell Endocrinol. 425:111-22 (2016))で全長型よりも短いC末端欠損型ERαが同定されたことにより、ERα抗体の認識部位により、ERαが陰性と報告されてきたもののうち、ERα変異体が存在している可能性が示唆された。この問題を解決すべく、腫瘍検体におけるERα変異体の発現プロファイルを確認する。 さらに、腫瘍の種類による変異体発現量の変化、悪性化に伴う変異体の発現頻度を解析することで、ホルモン感受性腫瘍におけるホルモン非感受性化や悪性化などの機構の解明につながる可能性がある。また、ERα変異体は乳癌以外のホルモン感受性腫瘍細胞において悪性化に関与していることが予想され、そして、ER変異体は薬剤耐性腫瘍のマーカーになる候補分子である可能性がある。
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Causes of Carryover |
デジタルPCRに関するチップ、試薬が高額であり、PCRの条件設定を行うため平成29年度は多額を要した。実験を中断せず実行するため、本来平成29年度の直接経費は120万円であったが、やむを得ず次年度より30万円前払い申請をしたが、実際は256,562円のみでとどまったため、43,438円が余った次第である。これは次年度の直接経費に使用する。
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