2017 Fiscal Year Research-status Report
オートファジー欠損による造血幹細胞機能不全の機構解明
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17K16191
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
橋本 倫拓 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 客員助教 (20772411)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | オートファジー / 造血幹細胞 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
造血幹細胞は自己複製能、多分化能の二つを大きな特徴とするすべての血液細胞の根源となる細胞である。 近年、加齢により、自己複製能・多分化能を消失することが明らかになってきた。一方で、オートファジーは飢餓への応答、障害のある細胞小器官、タンパク質を分解、細胞の恒常性維持に関わっている。近年オートファジーが造血幹細胞維持に重要であると考えられており、オートファジーを欠損した造血幹細胞では、造血能が阻害されることが報告されている。また、ミトコンドリアの形態、膜電位の活性、活性酸素の量と細胞周期が関連している事はよく知られており、申請者は、オートファジー欠損による造血幹細胞機能不全は機能不全に陥ったミトコンドリアを分解できないことによる酸化ストレス、もしくは、オートファジーにより異常のあるミトコンドリアが分解されないため、異常なメタボライトの蓄積によることに起因すると推測する。また、胎生期(増殖期)の造血幹細胞のミトコンドリア膜電位は成体(静止期)の造血幹細胞の約10倍であり、発生段階でミトコンドリア膜電位を抑制することが成体型の造血幹細胞への変化で重要であると考えられる。本研究では、オートファジー欠損による造血幹細胞の機能不全、発生期における胎生期(増殖期)から成体(静止期)への変化が共にオートファジーによるミトコンドリア膜電位の抑制が中心になり作用していると考え詳細な分子機構の解明を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者はコンディショナルAtg7KO(Atg7flox/flox-Mx1-Cre)、胎生期からのAtg7KO(Atg7flox/flox-Vav-Cre)の間で比較解析を行った。生後8週目にコンディショナルKO(生後4週目からAtg7をKO)マウスHSCsでは、ミトコンドリア膜電位(JC1-red)が約1.5倍、ミトコンドリア内活性酸素種(=ROS)が約1.2倍増となることを明らかにした。一方で胎生期からAtg7KOを誘導したマウスHSCsではミトコンドリア内ROSが野生型に比べ約4倍とコンディショナルにAtg7KOを誘導したマウスHSCsに比べ顕著に高値を示すことを明らかにした。申請者らは、生後30日目の野生型マウスHSCsのミトコンドリア膜電位を解析した結果、膜電位が高値を示すもの、低値を示すものの2集団が出現していることを明らかにした。コンディショナルAtg7KOマウスは生後4週目にpIpCを投与しKOを誘導する。生後8週目での解析結果ではコンディショナルAtg7KOに比べ、胎生期からAtg7KOを誘導したマウスでミトコンドリア内ROSの量が顕著に多いことから、オートファジーは生後4週以前のHSCsのイベントで大きな役割を果たすことが示唆された。オートファジーは通常時のHSCs維持にも役割を果たすが、コンディショナルAtg7KOマウスは生後4週目でのKOから1年以上生存することを確認している。一方で胎生期からAtg7KOを誘導したマウスは生後9週目で重度の貧血、HSCsの枯渇などにより死亡することを確認した。この事実からもオートファジーが生後4週齢以前のイベントで大きな役割を果たすことが示唆される。申請者らは生後3週目から4週目にかけて起こる新生児期(増殖期)の造血から成体型(静止期)の造血への切り替わりにオートファジーが重要となると考え次年度も解析を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度で、オートファジーが生後4週目までのイベントで役割を果たすことを示唆する結果を得られたため、本年では、まず胎生期からAtg7KOを誘導したマウスHSCsにおいて生後4週目のHSCsのミトコンドリア膜電位、ミトコンドリア内ROS量、細胞周期を解析する。また、野生型マウス生後30日目のミトコンドリア膜電位上位20%、下位20%のHSCs、胎生期からAtg7KOを誘導したマウスHSCsにおいてRNAseqを実施し、オートファジーが増殖期から静止期への移行に役割を果たすのかをミトコンドリア周辺因子を中心に解析明らかにする。さらにマスサイトメーターによる解析を実施、RNAseqの解析から得られた結果をタンパクレベルで確認する。コンディショナルAtg7KOマウスにおいても、HSCsを培養、増殖を開始させ、その後移植することでオートファジーの増殖期から静止期への移行への貢献度を重ねて確認する。コンディショナルAtg7KOにおいてpIpCを投与する時期を変化させ、オートファジーが最も影響を発揮する時期を決定する。また、RNAseq、マスサイトメーターから得られた解析結果より、オートファジー欠損による造血不全の原因を究明し、オートファジー欠損による造血不全からの回復法の開発を行う。
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Causes of Carryover |
研究に用いる予定のマウスの準備が遅れ、大きな費用のかかる実験の実施が遅延したため。海外の学会に不参加のため。 次年度は、本年度実施予定の実験を加え、円滑に、効率よく研究を進め、適切に助成金を使用していく。
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