2018 Fiscal Year Research-status Report
骨髄腫病態におけるSLAMF3の機能解明と新規分子標的治療法の開発
Project/Area Number |
17K16196
|
Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
石橋 真理子 日本医科大学, 医学部, 助教 (20599047)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 多発性骨髄腫 / SLAMF3 / 薬剤耐性 / 細胞増殖能 / 腫瘍微小環境 / 腫瘍免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
SLAMF3は、免疫グロブリン様ドメインを分子内に有するI型膜貫通糖タンパク質であり、他の細胞上に発現する同じ分子をリガンドとして認識するself-antigenである。SLAMF3は、主に、T細胞・NK細胞・B細胞に発現しており、更に、多発性骨髄腫の骨髄腫細胞(腫瘍細胞)においても高発現している。新たな骨髄腫細胞同定抗原としてSLAMF3の有用性を検討するため、骨髄腫患者の骨髄腫細胞においてSLAMF3と骨髄腫同定抗原CD138の発現を詳細に解析した。その結果、骨髄腫同定抗原CD138は病態進行に伴い発現が低下している症例が存在していたが、SLAMF3の発現は病勢進行に関わらず不変であった。しかしながら、骨髄腫細胞におけるSLAMF3の機能は十分には解明されていない。本研究では、骨髄腫細胞におけるSLAMF3の機能の解析し、新規治療薬の標的として検討を行った。 更に、近年、様々な免疫関連分子の可溶型が腫瘍患者の血清中に検出されおり、その濃度が病態進行や予後に関連すると報告されている。そこで、骨髄腫患者の血清中の可溶型SLAMF3の濃度をELISA法にて測定した。 前年度と今年度の結果から、in vitroとin vivoの解析においてSLAMF3が、アダプター蛋白質GRB2とSHP2を介したERKシグナルの活性化を誘導し、骨髄腫細胞の増悪 (細胞増殖能の亢進と薬剤抵抗性)を強く誘導していることを明らかにした。SLAMF3は骨髄腫の病勢とは関わらず、骨髄腫細胞に高発現しているこことから、免疫治療を含む骨髄腫治療の新たな標的となると推察された。 一方、骨髄腫患者における血清可溶型SLAMF3の濃度が、病勢進行を反映しており、可溶型SLAMF3が予後指標として有用であることを本研究で明らかにした。以上のことを纏めて、国内学会と国際学会で発表し、現在は論文を作成し、投稿中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成30年度では、以下の結果を得た。In vivo解析では、SLAMF3陰性骨髄腫細胞を用いて作成したSLAMF3安定型発現細胞と細胞内ドメイン欠失SLAMF3(ΔSLAMF3)発現細胞を免疫不全マウスNOGに移植した。SLAMF3細胞移植NOGマウスはΔSLAMF3細胞移植NOGマウスと比較し、有意に腫瘤の大きくなるスピードが速く、生存期間が短かった。続いて、SLAMF3細胞とΔSLAMF3細胞の間で遺伝子発現の違いを詳細に調べるために、DNAマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析を行った。Gene set enrichment analysis (GSEA)で解析を行った結果、SLAMF3細胞には、ERKシグナルに関連する遺伝子群が多く同定され、且つ、骨髄腫細胞の増悪化に関連する遺伝子群も亢進していた。更に、SLAMF3を発現している骨髄腫細胞を抗SLAMF3抗体で処理すると細胞増殖能は有意に低下し、薬剤感受性が増加した。つまり、骨髄腫細胞間のSLAMF3-SLAMF3の相互作用が、骨髄腫の増悪化に関与していることを明らかにした。 次に、骨髄腫患者の血清中の可溶型SLAMF3濃度をELISA法にて検討した。正常コントロールと比較し、骨髄腫患者では可溶型SLAMF3濃度が有意に増加しており、且つ、骨髄腫の病態進行とともに亢進していた。更に、可溶型SLAMF3高値群の患者は、低値群の患者と比較し、有意に病勢が亢進しており、無増悪生存期間も短かった。可溶型SLAMF3は、骨髄腫細胞の培養上清中、SLAMF3発現骨髄腫細胞を移植したNOGマウスの血清中にも検出された。この可溶型SLAMF3は、骨髄腫細胞が産生するMMP-9により切断されたSLAMF3の細胞外ドメイン部分であった。 以上より、SLAMF3は骨髄腫の増悪化に関与する分子であり、その可溶型SLAMF3は骨髄腫の病勢を反映する指標になることを明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
SLAMF3の細胞内ドメインのチロシンベーススイッチモチーフにはSNP rs509749が存在する。SLAMF3のSNP rs509749のAアレルは、全身性エリトマトーデス(SLE, systemic lupus erythematosus)においてリスクアレルであることが報告されている。しかしながら、骨髄腫患者においてはSLAMF3のSNP rs509749においての報告はない。そこで、骨髄腫患者と健常者において、SLAMF3のSNPアレルの頻度を検討し、更に、アレルの違いで予後に違いがあるのか検討する。また、SLAMF3のアレルの違いによって、骨髄腫の細胞増殖能や薬剤感受性に与える影響を解析する。骨髄腫におけるSLAMF3のSNP rs509749に関して纏めて、論文で発表する。
|
Causes of Carryover |
消耗品(培養、実験関連プラスチッ ク)、実験試薬 (抗体、サイトカイン、real-time PCR試薬、ELISA、等)、NOGマウス購入に使用する。また、論文の掲載料と学会などの成果発表時の旅費に使用する。
|
-
[Journal Article] Clinical impact of serum soluble SLAMF7 in multiple myeloma.2018
Author(s)
Ishibashi M, Soeda S, Sasaki M, Handa H, Imai Y, Tanaka N, Tanosaki S, Ito S, Odajima T, Sugimori H, Asayama T, Sunakawa M, Kaito Y, Kinoshita R, Kuribayashi Y, Onodera A, Moriya K, Tanaka J, Tsukune Y, Komatsu N, Inokuchi K, Tamura H.
-
Journal Title
Oncotarget
Volume: 9(78)
Pages: 34784-34793
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-