2017 Fiscal Year Research-status Report
なぜストレスはアレルギーを悪化させるのか?:概日時計との関わり
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17K16206
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
石丸 かよ子 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (10710353)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 概日時計 / マスト細胞 / ストレス / アナフィラキシーショック |
Outline of Annual Research Achievements |
精神的ストレスがマスト細胞の概日時計(時計遺伝子)機能を介してI型アレルギー反応に影響するか否かを明らかにするため、拘束ストレスをマウスに与え、今年度まで以下の項目についてコントロールマウスと比較検討した。 (1)拘束ストレスがマスト細胞の概日時計機能に与える影響:時計遺伝子Period2(Per2)とルシフェラーゼの融合タンパク質を発現するノックインマウス由来の骨髄細胞をin vitroでIL-3存在下で分化させた後、マスト細胞欠損マウスの皮下に移入した。これらのマウスではin vivo imagingの手法を用い皮下に移入したマスト細胞のPER2の発現変化を、ルシフェラーゼによる発光反応に基づいて検出できる。このマウスに拘束ストレス(毎日10時から12時の間の2時間マウスを拘束し、3-5日間続けた)を与え、マスト細胞におけるPER2タンパク質発現の概日リズムに与える影響についてin vivoで検討した。その結果、拘束ストレスはマスト細胞のPER2タンパク質発現の概日リズムを消失させた。(2)拘束ストレスが概日時計によるI型アレルギー反応の時間依存的制御に与える影響: 拘束ストレスが概日時計によるI型アレルギー反応の時間依存的な制御に与える影響を明らかにするために、I型アレルギー反応のモデルとして、野生型マウスを卵白アルブミン(OVA)とアラムで皮下感作し、その後OVAを静注し体温低下を惹起するアナフィラキシーショックモデルを用いて検討した。以前の検討から、野生型マウスではマスト細胞の概日時計機能によって休息期にアナフィラキシーショックを惹起するほうが活動期に惹起するより強いことが明らかになっている。上記(1)の拘束ストレスを与えたマウスではアナフィラキシーショックの日内変動が消失した。現在、この結果を確認中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度まで (1)拘束ストレスはマスト細胞のPER2タンパク質発現の概日リズムを消失させたこと、 (2)拘束ストレスが概日時計によるI型アレルギー反応の時間依存的制御に与える影響について 拘束ストレスを与えたマウスではアナフィラキシーショックの日内変動が消失したことを明らかにした。 以上の成果から研究は概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、拘束ストレスがI型アレルギー反応に及ぼす効果が本当に概日時計依存的であるか否かについて検討するため、拘束ストレス負荷時にPer2タンパク質分解酵素であるカゼインキナーゼ(casein kinase)Iδ/εの阻害剤(PF5006739)(10mg/kg/day, s.c.)を毎日定時刻ZT10(16時)に投与することによって正常な概日リズムを薬理学的に維持しておき(Sci Rep 6:29983, 2016)、その時の拘束ストレスのアナフィラキーショックモデルへの影響について検討する。本実験によって拘束ストレスがI型アレルギ ー反応(アナフィラキシーショックモデル)に与える影響が概日時計依存的であるか否かについて明らかにすることができる。本実験ではマスト細胞の概日時計が特異的に重要か否かの判断はできないが申請者らの先行研究の結果とあわせて拘束ストレスによるI型アレルギー反応制御におけるマスト細胞概日時計の重要性を示唆することができると考えている。また拘束ストレスがマスト細胞におけるIgE受容体シグナル関連分子群発現の日内変動に与える影響について、拘束ストレスを与えたマウスとコントロールマウスから腹腔マスト細胞を10時、16時、22時、4時に単離し、IgE受容体シグナル関連分子群(FcεRI, Syk, Lyn, Orai1, etc.)のmRNAレベルでの発現変化について比較検討する。またFcεRI分子(FcεRIα)については Flow cytometryを用いてたんぱく質レベルでも比較検討する。本実験によって拘束ストレスがマスト細胞のIgE受容体シグナル関連分子発現の日内変動に与える影響が明らかになり、なぜ拘束ストレスがI型アレルギー反応を制御するかに関する分子メカニズムについて洞察を得ることができる。
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Causes of Carryover |
研究計画が順調に遂行されたので、予定していた実験用マウス購入費や細胞培養用試薬、分子生物学実験用試薬などが当初予算より節約できたから。節約した費用は、次年度における研究項目についてより詳細に検討することによって研究結果の妥当性についてより強い確証を得るために使用する予定。
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