2018 Fiscal Year Research-status Report
定量プロテオミクスによるANCA関連血管炎の活動性/臓器障害マーカーの同定と解析
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17K16209
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
石崎 淳 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (00620527)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ANCA関連血管炎 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は質量分析を用いた血清プロテオーム解析によりANCA関連血管炎(AAV)の活動性、臓器障害マーカーを見出している。それらのマーカータンパク質によるマクロファージのサイトカイン・ケモカイン放出作用を解析した。健常人8名のPBMCから磁気細胞分離法でCD14+単球を単離後、M-CSFを含むM-SFMで7日間培養しマクロファージに分化させた。小麦胚芽無細胞タンパク質合成法で作成した可溶性CD93(200ng/mL、1μg/mL、3μg/mL)を加え、2日培養後の上清を回収しELISA法でTNF-α、IL-6、IL-8を測定した。TIMP1(2μg/mL)、LRG1(10μg/mL)、S100A8/A9(20μg/mL)、H4(50μg/mL)でも同様に検証した。200ng/mL、1μg/mL、3μg/mL のsCD93刺激下で、濃度依存的にTNF-α(4.0, 85.1, 729.1pg/mL)、IL-6(3.6, 186.6, 941.5pg/mL)、IL-8(2.4, 6.6, 7.3ng/mL)は上昇した(n=1)。TIMP1、LRG1、S100A8/A9、H4で刺激後も、TNF-α、IL-6、IL-8は上昇したがsCD93と比較し低値であった。多検体(n=8)においてコントロールと比較しsCD93(3μg/mL)刺激下で、TNF-α(1.6 vs 245pg/mL, p<0.001)、IL-6(1.3 vs 749pg/mL, p<0.001)、IL-8(0.05 vs 9.9ng/mL, p<0.001)は有意に上昇した。CD93は単球や血管内皮細胞に発現する膜タンパク質で、炎症刺激で発現が増強し一部が切断され可溶型となり、マクロファージのTNF-α、IL-6、IL-8産生を亢進させることでAAVの炎症ループを形成することが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に基づき、我々が開発した選択反応モニタリング法(SRM;Selected reaction monitoring)による標的タンパク質の高感度な定量手法を用いて同定した、ANCA関連血管炎の新規活動性マーカーや、臓器障害マーカーについて、AAVの病態への関与について解析し、可溶性CD93が他の新規マーカーと比較してマクロファージのTNF-α、IL-6、IL-8産生をより亢進させることを見出している。
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Strategy for Future Research Activity |
我々が見出した活動性マーカーの中には、CD93、S100A8/S100A9、LRG1など血管内皮細胞傷害に関与することが推測されるタンパク質が数種類以上存在しており、これらのANCA関連血管炎の病態への関与について解析することは、発症機序の解明や治療標的を考えるうえで非常に重要である。我々が同定した腎や肺の臓器障害マーカーが、臓器のどの細胞から発現・産生されているのかを検討する。また、これらのマーカーが腎細胞や肺胞上皮細胞に対して影響を与えているかをアポトーシスの有無やシグナル解析などで検討する。
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Causes of Carryover |
(理由)活動性マーカーとして見出したTIMP-1に関して、現在、ANCA関連血管炎患者の血清でELISAを用いて経時的に定量解析を行っており、再発予測に有用であるかを検証している。このため、一部の研究費を次年度に繰り越す。次年度も研究計画書のとおりに、研究費を使用し研究を遂行していく予定である。 (使用計画)ELISAキットに充当予定。
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