2017 Fiscal Year Research-status Report
Slc7a5によるヒトB細胞の制御機構および膠原病治療標的としての有用性の究明
Project/Area Number |
17K16211
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
鳥越 雅隆 大分大学, 医学部, 医員 (40793146)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヒトB細胞 / Slc7a5 / L-Leucine / mTORC1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アミノ酸トランスポーターであるSlc7a5のヒトB細胞における発現、および役割について検証し、新たなB細胞制御機構として確立し、将来的には自己免疫疾患における新規治療法へつなげることを目指している。平成29年度は下記の通り、当初の実験計画を遂行した。 まずはヒトB細胞におけるslc7a5の発現やこれを介したL-leucineの細胞内流入を検証した。具体的には、関節リウマチや全身性エリテマトーデスの病態に特異的な炎症メディエーターであるTLR9リガンドをヒトB細胞へ加えて刺激し、無刺激群と比較して、細胞表面上のSlc7a5の発現が蛋白レベルで亢進することをフローサイトメトリー法にて確認した。更に、放射性同位体で標識したL-LeucineのB細胞内への流入が、Slc7a5高発現群のみで亢進していることも確認することができた。更に、slc7a5に対する阻害薬であるBCHを活性化B細胞へ投与すると、濃度依存性に、L-Leucine流入が減少し、また同時にmTORC1活性も減衰する結果が得られた。また、培養液中からL-Leucineを除去したところ、mTORC1活性は消失した。これらの結果から、ヒトB細胞においては、L-Leucine流入がmTORC1活性に必須の現象であることが示唆された。 BCH(Slc7a5阻害薬)を活性化B細胞へ投与し、B細胞の機能やプラズマブラストへの分化への影響を検討した。その結果、BCHは濃度依存性にIgG産生やIL-6産生、TNFα産生を抑制した。 今後、RNAiを使用してB細胞のSlc7a5をノックダウンする手法を確立し、上述の通りSlc7a5がB細胞の多彩な免疫応答を制御していることを更に裏付けるデータを取得する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はin vitroの実験として、次の3点を計画していた。①「ヒトB細胞の活性化時にSlc7a5の発現が上昇することを蛋白レベルで確認」、②「Slc7a5を介したロイシンの細胞内流入を確認」、③「Slc7a5によるロイシン輸送がB細胞の免疫応答に関与することを確認」。上述の通り、予定されていた研究計画は全て実施できており、現在は、既に得られたデータや結論を補強するための補足実験を実施中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在入手可能なSlc7a5阻害薬はBCHのみであり、この阻害薬1剤のみでSlc7a5のB細胞における役割を実証するのは科学的根拠として不十分である。そこで、今後はRNAiを使用してB細胞のSlc7a5をノックダウンする手法を確立し、Slc7a5のB細胞における役割について、阻害剤以外の方法で再検証する必要がある。 また、平成30年度は、膠原病患者の末梢血B細胞のSlc7a5発現量を確認し、健常人と比較する予定である。
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Causes of Carryover |
平成29年度に科研費を使用可能となる前の段階で、研究に着手する必要があり、他の研究者の研究費を使用させて頂き、研究を開始した。また、平成29年度は研究自体が大きなトラブルや予定外の問題が生じることなく順調に進行したため、次年度使用額が発生した。 しかし、当初計画していた実験のみでは、科学的な再現性や確実性が不十分である点を、学会発表時に他の研究者より指摘されており、B細胞の遺伝子ノックダウンなどの新たな手法を試みる必要が生じた。次年度使用額はこれらの追加実験や、もともと平成30年度以降に予定していた実験(膠原病患者検体や膠原病モデルマウスを使用した実験)に使用する予定である。
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