2017 Fiscal Year Annual Research Report
エンテロウイルス71の変異に伴うウイルス学的性状変化と立体構造変化の解析
Project/Area Number |
17K16221
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
片岡 周子 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 特任助教 (10646623)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ウイルス学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、EV71感染症流行国であるベトナムのEV71流行株を用いたウイルス学的性状解析とin silico立体構造解析を行うことで、その経時的構造変化と抗原変異の機序を明らかにすることを目的とした。 ベトナムでのEV71流行株の解析から、2013年以前のEV71の主な流行株は遺伝子型C4であったが、それ以降は徐々に遺伝子型B5が増加傾向にあり、2015年には主な流行株がB5株になっており、そのB5株においてカプシドタンパクVP1における特異的な変異を発見した。そこでEV71-C4の大きな流行があった2012年に分離されたB5株(2012-B5WT)、及び2015年の流行株B5(2015-B5WT)の感染性クローンを作製した。さらに2015年の株に特異的な変異を導入した2012年の株(2012-B5MT)と、その変異部分に2012年の株の配列を持つ2015年の株(2015-B5MT)を作製し、それらのウイルス学的性状を調べるため、ウイルス増殖能やウイルス受容体への結合能、さらにEV71に対するウサギ抗血清のそれぞれのクローンに対する中和能を検討した。その結果、その2012-B5WT、2015-B5WTともにウイルスの性状の違いは見られなかった。これまで多くの文献で報告のあるVP1の145番目のアミノ酸の変異を導入してみるとウイルス受容体への結合や増殖に変化が見られたものの、2012-B5MT、2015-B5MTにおいても変化は見られなかった。また、MOEホモロジーモデリングを行ったが、カプシドタンパクの大きな変化は見られなかった。 以上のことから、流行経時的構造変化と抗原の変異はVP1の変異のみで規定されるものではないことが考えられ、今後より多くの流行株をモニタリングしていき、全てのカプシドタンパクまたは非構造タンパクも含めた全ウイルスタンパクを検討していく必要がある。
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