2017 Fiscal Year Research-status Report
Molecular epidemiological study of syphilis in Japan
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17K16222
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安達 英輔 東京大学, 医科学研究所, 助教 (80725804)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 梅毒 / 分子疫学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度の東京都の梅毒報告症例数は5年前の6倍と激増した。当施設においても梅毒患者は増えており、検体を集めているところである。本研究では1) 日本由来T. pallidumのゲノム解析と、識別能の高い系統解析が可能となる2) MLST(multi-locus sequence typing)法の確立による分子疫学研究を提案しているが、現在のところ検体を集めている状況である。2017年10月まで、当院で20例から検体を収集している。一方で、当初予定していた、国内の他施設からの検体集めについては解析が進められていないことや、共同研究者の異動などで実施できていないのが現状である。しかしながら患者の増加から、国内のものは症例数としては当院だけでも集まっている。DNAの抽出や、MLSTの解析については、今後行なっていく予定である。共同研究者が大分大学から大阪市立大学へ異動し、解析場所についても変更し、新たな共同研究基盤を作っていく必要がある状況となった。可能であれば、海外からの検体を集めることを考えているが、今年度はシャーガス病のエルサルバトルのプロジェクトへ参加しており、そのネットワークから海外からも検体を集める方法を探っているところである。2017年度はアルゼンチンからの留学生を指導し、実験の基本的な技術を習得させ、帰国した。当プロジェクトについても説明しており、アルゼンチンにおいてもプロジェクトの拡大を行う準備を行なった。系統解析を行う予定である共同研究者とは、今年度も他のプロジェクトで同様の技術をつかった研究を行なっており準備はできている。来年度はこ新しい基盤を作っていくが、本研究ではデジタルPCR法による全血からのT. pallidum由来遺伝子の検出法を確立することを目的としているが、これについても実験を行える場所が見つかっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
倫理委員会の申請を行い、20例ほどの検体が集められているが、DNAの抽出方法などが決定されておらず、解析は行えていない。どれほどの数で十分なDNAの抽出が得られるかわらず、検体が貴重であることから、マウスの睾丸を利用した古典的な培養法などで検体を増やすことができないかを考えているところである。当初予定していた、解析方法の再考や、共同研究者の異動などが多く、婦人科や泌尿器科からの検体収取を行なっていない。また、当初解析を行う予定であった共同研究者についても異動があり、新たな基盤を作る必要があり、現在その準備を行っているところである。しかしながらデジタルPCRなどの機器については実施場所の目処がつけられており、今後進めていきたい。解析ができていないため、検体集めについては規模を広げていないが、当施設だけでも20検体以上の血液検体を集められており、今後につなげていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究のMLST法では、従来のCDCシステムと整合性を保つためTP0136, TP0548, 23S rRNA genesの3遺伝子を用いるのに加え、Treponema近縁種や公共データベースでの予備的な探索でGroEL,RecA, GlpK, AdK, GDH, PyrG, RplBの遺伝子を候補としている。B-1)での成果により再検証するが、T. pallidumの多様性が低く、ハウスキーピング遺伝子のみで識別能が不十分な場合、CDCシステムのRFLP解析に使用されているtpr/arp領域を使用する予定である。これらの遺伝子配列情報を利用したMLST解析により、日本由来株を十分な識別能で解析可能かを検証していく。共同研究者の異動があり、今後の実験をスムーズに行うため解析の基盤を移すことができないかを検討中である。梅毒は2期以降になると、主に血中を介し全身に広がっていく。体表からのスワブから検体を得にくくなるため、血液から効率的に遺伝子を検出する技術が必要となる。これまで早期梅毒患者の血液中からT. pallidum由来DNAが、20%程度検出されると報告されているが、コピー数の占有率の低さのため、従来のPCR法ではこれ以上の検出率の向上は望めない。近年、原理的には試料中のDNAが1コピーでも検出でき、絶対定量が可能となるデジタルPCR法がliquid biopsyとして注目されており、本法が梅毒患者の血液にも応用可能と推測されているが、これについては使える機器の目処が立っており、実験を実施していきたい。
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Causes of Carryover |
今年度は検体保存に使用する装置を購入し、情報収集や共同研究者との基盤形成について使用したが、解析については一部のDNA抽出について行なったのみで、次世代シーケンサーやデジタルPCRなどの高額なランニングコストを使用する実験をおこなっていないため。来年度に行う可能性があるため、今年度は使用せず、来年度に残すこととした。今後はMLST法の確立などのための遺伝子解析を行なっていく予定である。
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