2017 Fiscal Year Annual Research Report
先端的ゲノム・エピゲノム解析を駆使した小児造血器腫瘍における難治化機序の解明
Project/Area Number |
17K16242
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関 正史 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20786884)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | T-ALL / 小児 / SPI1 / PU.1 / 融合遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
治療抵抗性もしくは再発症例において予後は極めて不良である小児T細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)においては、その遺伝学的基盤は十分に解明されていない。そこで、小児T-ALLに対するゲノム・エピゲノム解析により、臨床像に結びつくゲノム異常を同定し、新たな治療層別化や新規治療の導入を可能とする分子基盤を構築することを目的とし、これまで十分な検討がなされてこなかった非翻訳領域の異常も含めた解析を行うことで、新たな疾患分類を提唱し、新規治療戦略を考案することを目指した研究を計画した。 小児T-ALL 121例に対し、RNAシーケンス (RNA-seq)解析とターゲットキャプチャーシーケンスを用い、血球の分化に関わる重要な転写因子であるPU.1をコードする遺伝子のSPI1遺伝子が関連する新規融合遺伝子(STMN1-SPI1、TCF7-SPI1)を7例で同定した。SPI1融合遺伝子陽性症例は解析を行った小児T-ALL症例の3.9%を占め(7/181例)、一様に予後不良の経過を呈していた。SPI1融合遺伝子例は、T細胞へのコミットメント、T細胞のアイデンティティの確立、β選択後の分化成熟に関与する遺伝子の発現や、分化成熟のプロファイルにおいて、既知のT-ALLとは独立したサブセットであることが示された。SPI1融合遺伝子蛋白は転写活性を保持しており、マウス造血幹細胞において恒常的に発現させると、T細胞の増殖と分化停止を誘導した。SPI1融合遺伝子以外のSPI1高発現の機序として、SPI1発現を制御するpromoter領域の変異解析を並行して施行したが、検索した領域内には重複する遺伝子変異は同定されなかった。今回の結果から、予後不良である小児T-ALLにおいてSPI1融合遺伝子が関連する特有な小児T-ALLの病態が解明された。
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Research Products
(3 results)