2017 Fiscal Year Research-status Report
Emery-Dreifuss型筋ジストロフィーの核膜構造と核内Ca動態の検討
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17K16244
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
下島 正也 金沢大学, 大学病院, その他 (00613754)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ラミン / ネスプリン / 核内カルシウム動態 / 核膜陥入層 / エメリーフドレフュス症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
今回、我々はエメリードレフュス症候群の病態解明のため、原因蛋白であるエメリン、ラミン、及びネスプリンをノックダウンしたラット胎児心筋、及びiPS細胞を用いて、核内カルシウム動態、及び核膜陥入層の評価、及び本疾患の下流シグナルの解析を行った。ラミン、ネスプリンをノックダウンしたラット胎仔心筋を、siRNAを用いて作製を試みるも、十分に発現を低下させた胎仔心筋を作製することが本年度中にはできなかった。 このため、本研究室にて、以前作製した、核蛋白であるエメリンのエクソン6の1735G→Aに変異を有したエメリードレフュス型筋ジストロフィー由来iPS細胞から分化させた心筋細胞を用いて、核内カルシウム動態、及び核膜陥入層の評価を行ったところ、50% decay timeの有意な延長と、核膜陥入層の減少が確認された。核内カルシウム動態の変化によりCAMKⅡが活性化しNFATの核内移行が促進することが予測されたため、免疫染色を行ったが、NFATの核内移行の割合には変化が認められなかった。また、ERKの細胞内分布を同様に免疫染色にて評価を行ったところ、ERKの分布については、変化は認められなかったものの、pERKの核内の蛍光強度の増強が認められた。今後、ERKについてウエスタンブロット法にて蛋白発現の評価、及び、核内、細胞質内における変化を免疫沈降法を用いて行っていくと同時に、ラミン、ネスプリンノックダウンラット胎仔心筋が作成された場合には、同様にERKの評価、及びその下流のシグナルの変化を評価する予定としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
進捗状況はやや遅れていると考えられる。当初、ラット胎仔心筋を用いて、ラミンをノックダウン及びネスプリンをノックダウンしたエメリードレフュス症候群モデル心筋を作製し、核内カルシウム動態、及び核膜陥入層の評価を行う予定であったが、ラットの胎仔心筋の作成にあたり、ラット胎仔心筋と線維芽細胞の分離が不十分であり実験の進行が滞ってしまったが、パーコール液の濃度調整、及び遠心機の回転速度の調整によってラット胎仔心筋の十分な分離を行うことができた。また、ラミンノックダウン、及びネスプリンノックダウンの条件検討を試みたが、効率の良いノックダウンの条件が得られず、実験の進行に支障をきたしてしまった。このため、以前作成した1735G→Aの変異を有したエメリン欠損したエメリードレフュス型筋ジストロフィー由来のiPS心筋細胞を用いて、下流シグナルを並行して行うことした。まずは免疫染色を行い、NFAT、ERK、pERKの細胞内分布を評価する方針とした。免疫染色については、NFATは核内移行の割合には変化が認められなかった。ERKについては、変化は認められなかったものの、pERKの核内の蛍光強度の増強が認められた。今後、ERKについてウエスタンブロット法にて蛋白発現の評価、及び、核内、細胞質内における変化を免疫沈降法を用いて行っていくと同時に、ラミン、ネスプリンノックダウンラット胎仔心筋が作成された場合には、同様にERKの評価、及びその下流のシグナルの変化を評価する予定としている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究開始初年度であり、実験の準備に時間を要した。今後、安定して培養可能となったラット胎仔心筋の系を用いて、実験を進めていく。前年度、siRNAにてラミンとネスプリンのノックダウンを試みたが、十分なノックダウン効率を得ることができなかった。条件検討、及び新たなsiRNAを用いてノックダウンを試みる。ラミン、ネスプリンノックダウンのラット胎仔心筋が作成されたのちは、フェノタイプ確認のためにラットの胎仔心筋の核面積、細胞質面積の測定、及び核膜陥入層の評価、細胞質、核内カルシウム動態の評価(F/Fo、Time to peak, 50% decay time)を、蛍光カルシウムインディケーターであるFluo4を用いて行っていく予定としている。 また、メカニズムの検索についてはpERKの核内の蛍光強度の増強が認められたことより、今後、ERKについてウエスタンブロット法にて蛋白発現の評価、及び、核内、細胞質内における変化を免疫沈降法を用いて行っていくと同時に、ラミン、ネスプリンノックダウンラット胎仔心筋が作成された場合には、同様にERKの評価、及びその下流のシグナルの変化を評価する予定としている。ERKのシグナルに関して結果が得られなかった場合については、ラミンノックダウン及び、ネスプリンノックダウン胎仔心筋と健常胎仔心筋を、マイクロアレイを用いて、発現の変化しているカスケードがないかを検討する予定としている。
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Causes of Carryover |
本年度の事業計画の中で、使用予定であった物品費については、ラット胎仔心筋の購入、及び購入予定であった抗体については、当研究室での共同購入等を行ったために、本年度については本研究費を充てる必要がなかったということ、また、核内カルシウム動態、及び核膜陥入層の実験を行うだけの心筋細胞が得られなかったため、必要とされる試薬の量が減ったが、次年度実験が進展するにつれて、必要とする試薬が増加するため来年度の試薬費用に充てる予定としている。 また、本年の国際学会発表は他の資金を利用したため本研究費を使用しなかったが、次年度の旅費に充てる予定としている。
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Research Products
(1 results)